改訂新版 世界大百科事典 「プリンシパリーア」の意味・わかりやすい解説
プリンシパリーア
principalía
スペイン統治下のフィリピンにおける原住民支配階層。スペイン政庁はフィリピン統治にあたって,町(プエブロ)および村(バリオ)レベルの統治行政に従事する原住民役職者を,一括してプリンシパリーアまたはプリンシパーレスprincipalesと呼び,これにトリブート(貢税)や強制労働,兵役などを免除する特権を与えた。具体的には現職の町長および村長,元町長,10年以上継続して村長を務めた経験者,小学校教師,町の助役,田畑監視官,家畜監視官,警備監視官などが法制上これに属した。ほかに町役場の下級役人や教会で働く人々なども,権力者に近いということでこの中に加えられることがままあった。プリンシパリーアには先スペイン期の社会組織バランガイの統率者であるダトの家系に属する者が多かったので,一般住民は彼らに伝統的敬意を払った。加えてプリンシパリーアにはスペイン権力の後ろだてがあり,その権威はいっそう強化された。19世紀に入って商品農業が発達すると,プリンシパリーアの多くは地主あるいは仲買商人として経済力を蓄えた。同様の経済活動で富を蓄積した者が,新たにプリンシパリーアとして登用されるケースも多かった。プリンシパリーアはその経済力で子弟に高等教育を与え,新しい教養階層を形成した。このようにして,19世紀に入ると政治力,経済力,教養の面で,一般住民に比して圧倒的優位に立つ支配的階層が形成され,フィリピン原住民社会は2階層社会の特徴をもつにいたった。
執筆者:池端 雪浦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報