日本大百科全書(ニッポニカ) 「プルジナー」の意味・わかりやすい解説
プルジナー
ぷるじなー
Stanley B. Prusiner
(1942― )
アメリカの医師、神経学者。アイオワ州デモイン生まれ。1968年ペンシルベニア大学医学部を卒業。カリフォルニア大学サンフランシスコ校で内科臨床研修をしながら生化学の研究も行う。1972年より同大学にて神経科研修医。1981年より同大学神経学準教授。1983年よりカリフォルニア大学バークリー校ウイルス学準教授兼任。1984年サンフランシスコ校神経学、バークリー校ウイルス学教授。1988年よりサンフランシスコ校生化学教授兼任となる。
研修医時代に、進行性に脳が変性して死にいたるクロイツフェルト・ヤコブ病の患者をみて興味をもつ。1974年ヒツジでおこる同様の疾患スクレイピーの研究を始める。スクレイピーはヒツジ間で感染をするが、潜伏期間が非常に長いことからスローウイルス感染症とよばれ、その感染源の同定が待たれていた。1982年に、スクレイピーの病原体は核酸の遺伝情報をもち増殖する通常のウイルスではなく、プリオンと名づけたタンパク質そのものだとするプリオン仮説を提唱、それまでの常識を覆すまったく新しいタイプの感染の概念であったため反発が大きかったが、その後の多くの実験の積み重ねにより、広く受け入れられるようになった。プリオン病という新しい分野を切り開き、BSE(牛海綿状脳症、狂牛病)などの理解に大きく貢献した。これらの功績により、1997年のノーベル医学生理学賞を受賞した。
[馬場錬成]