クロイツフェルトヤコブ病(読み)クロイツフェルトヤコブビョウ(その他表記)Creutzfeld-Jakob disease

デジタル大辞泉 の解説

クロイツフェルト‐ヤコブ‐びょう〔‐ビヤウ〕【クロイツフェルトヤコブ病】

主に40歳代から発症し、大脳などの神経細胞病変が起こって、認知症・人格変化・錯乱運動失調などの症状を呈する病気。脳に沈着した異常型プリオン原因とされる。ドイツの神経精神科医クロイツフェルト(H.G.Creutzfeldt)およびヤコブ(A.M.Jakob)が報告CJD(Creutzfeldt-Jakob disease)。

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精選版 日本国語大辞典 の解説

クロイツフェルト‐ヤコブ‐びょう‥ビャウ【クロイツフェルトヤコブ病】

  1. 〘 名詞 〙 ( クロイツフェルト‐ヤコブはCreutzfeld-Jakob ) 蛋白感染粒子(プリオン)による神経病。多彩な神経症状に認知症が加わり急速に進行する。ドイツの神経精神科医H=G=クロイツフェルトとA=M=ヤコブが報告した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

クロイツフェルト・ヤコブ病
くろいつふぇるとやこぶびょう
Creutzfeld-Jakob disease

脳が萎縮して海綿状になり、急速に認知症の症状が進行する中枢神経病。人口100万人に1人の発病率で厚生労働省の特定疾患(難病)に指定されている。原因はヒツジの海綿状脳症であるスクレイピーと同様、感染性タンパク、プリオンと判明した。プリオンは本来、人間の脳に存在するが、異常な形のプリオンが入ると正常プリオンも異常化して発病すると考えられている。また、牛海綿状脳症BSE)からの感染が疑われる特異な症状のケースとして1995年(平成7)10月、10代の男女、1996年4月には10代から40代までの10人が、いずれもイギリスの医学誌『ランセット』に発表された。クロイツフェルト・ヤコブ病は死者の下垂体から集めたヒト成長ホルモン剤角膜移植、ヒトの硬膜移植などからも感染する。2008年2月現在、自然感染が約8割で、家族性、感染性が各1割ほど。感染症のうち硬膜移植を受けて発病した患者132人のほか、脳外科手術器具からの感染が疑われる患者が8人出ている。

[田辺 功]

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改訂新版 世界大百科事典 の解説

クロイツフェルト=ヤコブ病 (クロイツフェルトヤコブびょう)
Creutzfeldt-Jakob's disease

1920年にクロイツフェルトHans G.Creutzfeldt(1885-1964),翌21年にヤコブAlfons Jakob(1884-1931)によって記載された神経疾患。中年以降に男女差なく発症,初期は性格変化や記憶・記銘力低下を示し,やがて認知症が進行し,ミオクローヌスmyoclonus(四肢や体幹に同時的,瞬間的に起こる筋肉の収縮),錐体路症状(運動麻痺など)および錐体外路症状(筋緊張の異常と不随意運動など)を呈し,末期には無言無動状態となり,数ヵ月から1年半くらいの経過で死亡する。特徴的な症状,脳波あるいはCTスキャンなどにより診断はさほど困難ではないが,まだ有効な治療法は知られていない。病理学的所見としては,大脳皮質を中心とする神経細胞の脱落,海綿状変性などがみられる。この病気は,患者の脳を乳化してチンパンジーなどの動物に接種することによって伝播可能であり,患者から角膜移植を受けた者,ヒト下垂体より調製された成長ホルモンの投与を受けた者などにも発症がみられる。本症はプリオンと呼ばれる因子により伝播し,このような疾患はプリオン病と総称されるが,最近は牛のプリオン病である牛海綿状脳症(狂牛病)からヒトへの伝播もありうると考えられており,社会的にも大きな問題となっている。
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百科事典マイペディア の解説

クロイツフェルト=ヤコブ病【クロイツフェルトヤコブびょう】

プリオンによってひきおこされる脳障害。Creutzfeldt-Jacob's disease(CJD)。脳の灰白質が障害されるため,急速に人格障害認知症痴呆)が進み,意識障害,精神運動性興奮による錯乱,幻覚,幻想などの分裂様症状などが現れ,運動麻痺(まひ),運動失調などの神経症状を呈する。
→関連項目狂牛病

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

クロイツフェルト・ヤコブ病
クロイツフェルト・ヤコブびょう
Creutzfeldt Jakob Disease; CJD

特殊な感染性蛋白質プリオンを病原体とする病気で,脳がスポンジ状になり,けいれん,麻痺,痴呆等の脳障害を引起し,多くは死にいたる。通常は中高年に多く発症するが,イギリスの場合若年層に発症が目立ったため,ウシ海綿状脳症 (狂牛病) にかかったウシからの感染の可能性が問題となった。 1996年,イギリス政府の委員会は狂牛病との関連性を認める発表を行なったが,これに対し世界保健機関 WHOの専門家会議は,狂牛病との明確な関連性を否定しながらも,狂牛病への何らかの接触が最も可能性のある仮説であると曖昧な結論を下した。同年 10月,ロンドン大学の J.コリンズ博士らは,クロイツフェルト・ヤコブ病の病原体プリオンと狂牛病のプリオンが同系列のものであるとの研究結果を発表した。

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栄養・生化学辞典 の解説

クロイツフェルトヤコブ病

 脳症の一つ.若年性痴呆などが起こる.近年ウシ海綿状脳症との関連で注目されている,変形クロイツフェルト-ヤコブ病の原因はプリオンというタンパク質の変形したものとされている.

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世界大百科事典(旧版)内のクロイツフェルトヤコブ病の言及

【脳炎】より

…脳実質の炎症による神経疾患で,病原体の脳実質への直接の影響によるもの,各種感染症に続発したり予防接種後などにおこるアレルギー性機序の考えられるものがある。(1)病原体が脳実質を直接侵すことによる脳炎 日本脳炎,エコノモ脳炎,単純ヘルペス脳炎などをはじめ病原体はほとんどがウイルスである。症状は発熱,頭痛,吐き気,嘔吐などで始まり,意識障害や精神症状を呈するようになる。回復後も後遺症を残すことがまれではない。…

※「クロイツフェルトヤコブ病」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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