脳が萎縮して海綿状になり、急速に認知症の症状が進行する中枢神経病。人口100万人に1人の発病率で厚生労働省の特定疾患(難病)に指定されている。原因はヒツジの海綿状脳症であるスクレイピーと同様、感染性タンパク、プリオンと判明した。プリオンは本来、人間の脳に存在するが、異常な形のプリオンが入ると正常プリオンも異常化して発病すると考えられている。また、牛海綿状脳症(BSE)からの感染が疑われる特異な症状のケースとして1995年(平成7)10月、10代の男女、1996年4月には10代から40代までの10人が、いずれもイギリスの医学誌『ランセット』に発表された。クロイツフェルト・ヤコブ病は死者の下垂体から集めたヒト成長ホルモン剤や角膜移植、ヒトの硬膜移植などからも感染する。2008年2月現在、自然感染が約8割で、家族性、感染性が各1割ほど。感染症のうち硬膜移植を受けて発病した患者132人のほか、脳外科手術器具からの感染が疑われる患者が8人出ている。
[田辺 功]
1920年にクロイツフェルトHans G.Creutzfeldt(1885-1964),翌21年にヤコブAlfons Jakob(1884-1931)によって記載された神経疾患。中年以降に男女差なく発症,初期は性格変化や記憶・記銘力低下を示し,やがて認知症が進行し,ミオクローヌスmyoclonus(四肢や体幹に同時的,瞬間的に起こる筋肉の収縮),錐体路症状(運動麻痺など)および錐体外路症状(筋緊張の異常と不随意運動など)を呈し,末期には無言無動状態となり,数ヵ月から1年半くらいの経過で死亡する。特徴的な症状,脳波あるいはCTスキャンなどにより診断はさほど困難ではないが,まだ有効な治療法は知られていない。病理学的所見としては,大脳皮質を中心とする神経細胞の脱落,海綿状変性などがみられる。この病気は,患者の脳を乳化してチンパンジーなどの動物に接種することによって伝播可能であり,患者から角膜移植を受けた者,ヒト下垂体より調製された成長ホルモンの投与を受けた者などにも発症がみられる。本症はプリオンと呼ばれる因子により伝播し,このような疾患はプリオン病と総称されるが,最近は牛のプリオン病である牛海綿状脳症(狂牛病)からヒトへの伝播もありうると考えられており,社会的にも大きな問題となっている。
執筆者:水沢 英洋
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…脳実質の炎症による神経疾患で,病原体の脳実質への直接の影響によるもの,各種感染症に続発したり予防接種後などにおこるアレルギー性機序の考えられるものがある。(1)病原体が脳実質を直接侵すことによる脳炎 日本脳炎,エコノモ脳炎,単純ヘルペス脳炎などをはじめ病原体はほとんどがウイルスである。症状は発熱,頭痛,吐き気,嘔吐などで始まり,意識障害や精神症状を呈するようになる。回復後も後遺症を残すことがまれではない。…
※「クロイツフェルトヤコブ病」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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