ヘカタイオス(読み)へかたいおす(英語表記)Hekataios

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘカタイオス」の意味・わかりやすい解説

ヘカタイオス
へかたいおす
Hekataios
(前550ころ―前475ころ)

古代ギリシアの歴史家、地理学者。小アジアのミレトス出身。叙事詩叙情詩の表現形式がギリシアで生まれたのちに、詩の韻律に束縛されずに自由に表現できる散文で記述した「ロゴポイオイ」と称される人々の最初期の1人。その神話学的作品は『系図学』『歴史』の名称で伝わり、地理学的作品は『地誌』『世界周遊記』の名で伝わる。諸国を歴訪し、諸民族の風俗、文化や地理を記述してヘロドトスの先駆者となり、またアナクシマンドロスの地図を改良するなど、ミレトス学派の合理的な伝統のうえにたって活躍した。

[豊田和二]

『原随園著『ヘカタイオスの研究』(『ギリシア史研究余滴』所収・1976・同朋舎出版)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヘカタイオス」の意味・わかりやすい解説

ヘカタイオス
Hecataeus

前5世紀頃のギリシアの歴史家,地理学者。ミレトスの出身。広く旅行し,その見聞から『世界案内記』Periodos gēsを著し,世界地図を作成して各地の地誌,風俗を記録した。また『系譜』Genealogia(『歴史』Historiai)では旧家の伝説上の祖先である神話の英雄たちに批判的検討を試みた。いずれの著書も直接伝承されてはいない。のちにヘロドトスに批判されたが,その及ぼした影響は大きい。前500年のイオニア反乱に際し,ペルシアの強大さを知るゆえに,反乱の無謀さを指摘して反対した話もヘロドトスにより伝えられている。

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