ヘリコニア(その他表記)Heliconia

改訂新版 世界大百科事典 「ヘリコニア」の意味・わかりやすい解説

ヘリコニア
Heliconia

バショウ科ヘリコニア属Heliconia多年生植物で,熱帯アメリカ,南太平洋諸島などに30~40種を産する。葉姿はバショウに似ていて,葉鞘(ようしよう)が巻き重なって偽茎ができる。葉は楕円形ないし長方形で,長い葉柄をもつ。花は美しい苞の内につき,葉,苞ともに2列生。苞の美しい植物として知られ,切花としても使われる。熱帯では多くの種が栽培される。

 ヘリコニア・フミリスH.humilis Jacq.はトリニダード島,アマゾン上流の原産緑色の葉は長さ50cm前後,花序は上向きで,分枝苞が花軸両側に数少なく並ぶ。苞は舟底形でやや硬く,赤色で回りが緑色。内側につく花は緑白色。切花として有名である。園芸家がヘリコニア・イルストリスH.illustrisと呼ぶものは,野生種は知られていない。小型で高さ1m前後,株もとから幅広い葉が叢生(そうせい)する。葉は卵状披針形。本種には緑色の葉に黄白色の斑(ふ)が入るオーレオ・ストリアータcv.Aureostriataと赤色系のルブラcv.Rubra,ルブリカウリスcv.Rubricaulisなどの栽培品種があり,葉の美しい種類として知られる。ヘリコニア・プシタコルムH.psittacolum L.f.は中央アメリカの原産。高さは1mくらい。葉は緑色で線状披針形,花軸は細く分枝苞は4~5枚で橙赤色,花は黄色,小型で,切花に使われる。ほかに2~3の変種がある。ヘリコニア・ロストラタH.rostrata Ruiz.et Pav.はペルー原産。高さは2~3m,葉は緑色の長楕円形。花序は花軸の所で曲がり,下垂し,長さ50cmほどになる。苞は卵形で赤く回りは黄色,花も黄色。苞はヘリコニアの中でいちばん美しいといわれる。ヘリコニアは冬の寒さに弱いため,栽培するには温度を18~20℃以上に保つ。直射光線下でも明るい日陰でも花は咲く。腐葉土を多くした排水のよい軽い土に植え,やや湿りぎみに管理する。繁殖株分けにより,6~7月がよい。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘリコニア」の意味・わかりやすい解説

ヘリコニア
へりこにあ
[学] Heliconia

バショウ科(APG分類:オウムバナ科)の不耐寒性多年草。熱帯アメリカに80種分布する。地下茎をもち、葉は2列に互生し、地際(じぎわ)は葉鞘(ようしょう)が重なり合って偽茎となる。中心から伸びた花茎の先に舟形の包葉をつけ、その中に数花をつける。包葉はきれいに色づき、長期間楽しむことができる。よく知られるアウランティアカH. aurantiaca Ghiesbr. ex Lem.は南部メキシコの林内に生え、高さ1メートルに達し、4~5月、茎頂に橙赤(とうせき)色で先が緑色の包葉を3、4枚つける。花は黄白色。フミリスH. humilis Jacg.はトリニダードからブラジル原産。高さ60~80センチメートル、包は舟形、赤色で周辺に向けて緑色に変わる。花は淡黄色。やや小型種。

[植村猶行 2019年6月18日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヘリコニア」の意味・わかりやすい解説

ヘリコニア
Heliconia; false bird-of-paradise; lobster-claw

バショウ科ヘリコニア属の総称。 30~40種あるとも 150種以上あるともいわれ,そのほとんどが熱帯アメリカに産する宿根草。包が美しく色づいて長期間観賞できる種類が多く,切り花素材としてハワイなどから輸入されるほか,植物園の温室などでもみられる。左右交互に葉を伸ばし,葉鞘部が下部で重なり合って偽茎を形成。花茎の先に,舟形の包が規則正しく左右2列に並ぶ。花序を上向きにまっすぐ立てるものと,下垂させるものとがある。包の色は紅赤色や橙色,黄色,緑色や,赤・黄・緑の対比の鮮かな複色などがある。

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百科事典マイペディア 「ヘリコニア」の意味・わかりやすい解説

ヘリコニア

熱帯アメリカや南太平洋諸島に原産するバショウ科の多年生植物。30〜40種あり,葉身と葉鞘との間に長い柄をもつタイプと,ごく短い柄があるか無柄のタイプとに大別される。葉鞘の基部が重なり合った偽茎の先端から出る花序に観賞価値があり,温室で栽培されることが多い。花序で目立つのは花軸に互生するボート形の苞で,赤〜黄色に着色して美しい。おもに株分でふやす。

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