改訂新版 世界大百科事典 「ヘルモン山」の意味・わかりやすい解説
ヘルモン[山]
Mount Hermon
アンチ・レバノン山脈の南端,レバノンとシリアの国境にある山。標高2814m。アラビア語ではジャバル・アッシャイフJabal al-Shaykh。北にベカー高原を望み,南はハウラーン山地からシリア砂漠とつらなる。アッシリア語,フェニキア語,そして旧約聖書にもその名をのこしているのは,古代以来の山岳信仰にかかわる山であるからで,カナン地方では最も高い山でもある。
古代信仰の遺跡は,第2峰のカスル・アンタルQaṣr Antarに残っているが,なかにはローマ時代のものと確認されているのもある。アラブは,白髪・白鬚の長老(シャイフ)の顔を,雪をいただき白い雲をなびかせるこの山の姿に思いあわせたところから,〈シャイフ山〉と呼んだともいう。山麓の村は多くの泉と清水に恵まれ,上質のブドウを産することでも知られている。
執筆者:林 武
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報