ヘンルーダ(英語表記)common rue
Ruta graveolens L.

デジタル大辞泉 「ヘンルーダ」の意味・読み・例文・類語

ヘンルーダ(〈オランダ〉wijnruit)

ミカン科多年草。高さ約1メートル。葉は羽状に細かく裂けていて、強い匂いがある。初夏、黄色い花が咲く。南ヨーロッパ原産で、香草。日本には明治初年に渡来。うんこう

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精選版 日本国語大辞典 「ヘンルーダ」の意味・読み・例文・類語

ヘンルーダ

  1. 〘 名詞 〙 ( [オランダ語] wijnruit の変化した語 ) ミカン科の多年草。南ヨーロッパ原産。明治初年に渡来し観賞用にまれに栽植される。高さ約一メートル。茎・葉・果実には油点があり、強い芳香を放つ。葉は二~三回羽状複葉。各裂片は長楕円状へら形で紫緑色を帯びる。初夏、枝梢に緑黄色の小さな四~五弁花が咲く。果実は小球形で四~五室からなる。鎮痙(ちんけい)駆虫・通経・かぜ薬にされ、葉を書籍にはさむと虫害を防ぐという。江戸時代の本草書でヘンルーダと称しているものはコヘンルーダのこと。漢名、芸香(うんこう)。《 季語・夏 》
    1. [初出の実例]「へんるうだ、これもるうだに似てあくしうあり」(出典:紅毛談(1765)下)
    2. [その他の文献]〔日本植物名彙(1884)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「ヘンルーダ」の意味・わかりやすい解説

ヘンルーダ
common rue
Ruta graveolens L.

強臭のある南ヨーロッパ原産の薬用植物で,日本には1868年に渡来し,現在でもまれに植えられているミカン科の多年草。高さ50~100cmに達する。茎は白色を帯びた緑色で,下部は木質。葉は互生し,2~3回全裂または深裂し,長さ6~12cm。裂片は長楕円形またはへら形で,縁に鋸歯がないかまたは小さい鋸歯があり,淡緑色または紫色を帯びる。初夏,枝先に集散花序を出し,径2cmくらいの黄色の花をつける。萼片は4~5枚。花弁は4~5枚で縁は細裂する。おしべは8~10本。子房の下に緑色の花盤がある。蒴果(さくか)は4~5室,表面に油点が多く,種子は褐色で小型。葉は古来,調理用に使われ,ソース,肉,飲料,酢などの香料としていた。また,葉および枝からとった油は,香水,味付けに用い,葉の浸出液を薬用(通経剤,うがい水,浣腸薬)とする。種子を粉砕してブドウ酒に入れたものも,同様に薬用にされた。また,茎葉を本の間にはさんでおくと虫害を防ぐという。和名ヘンルーダはオランダ語ウェインライトwijnruitのなまり。ヘンルーダ属Rutaのかおりの強い植物を英名rueという。
執筆者:

ヘンルーダはローマ時代から魔除けの植物とされ,今でもイタリアの農民はその葉を身に着ける。大プリニウス《博物誌》によれば,これを煎じると眼病弱視に効果があり,彫刻家や画家に愛用されたという。ヘビサソリの毒をはじめ猛毒を打ち消すとも信じられ,前2世紀のポントス国王ミトリダテス6世は毒殺から身を守るため,ヘンルーダを含む薬用植物を毎食後に服用し,毒の効かぬ体をつくったといわれる。また中世では魔女がのろいをかけるのに使う代表的な植物となったが,半面,これを携行していれば魔女を見破ることができ,また娘が着ければ男の誘惑に乗らずにすむなど,魔除けの信仰も継続された。エリザベス1世時代のイギリスでは,その強臭が疫病を押さえると信じられ,部屋にまかれたり入口につるされた。なお,イタチが毒ヘビをかみ殺せるのはヘンルーダを食べているおかげだといわれ,よそから盗みとってきたヘンルーダはよく育つとも伝えられる。この植物は12世紀以来ザクセンの標章に用いられている。花言葉は〈徳と慈悲〉。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘンルーダ」の意味・わかりやすい解説

ヘンルーダ
へんるーだ
[学] Ruta graveolens L.

ミカン科(APG分類:ミカン科)の常緑多年草。南ヨーロッパ原産。香草として栽培され、明治初年に日本に導入された。オランダ語のビンルートwijnruitが訛(なま)ってヘンルーダとよばれるようになったという。根元は小木状になる。高さ約1メートル、葉は2~3回羽状に裂け、裂片は長楕円(ちょうだえん)形。6~7月に集散花序を茎頂につけ、黄色の小花を開く。小花は5弁または4弁。蒴果(さくか)は球形、中に褐色小球形の種子がある。葉はもむと強いにおいがし、欧米人はこのにおいを好んで、料理の香料に用い、昔から有名なハーブである。また通経、鎮けいなどの薬効も知られ、葉を書物の間に挟めば虫食い予防になるという。しかし日本人一般にはこのにおいは臭みとして嫌われ、ハーブとしても普及していない。

[星川清親 2020年10月16日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヘンルーダ」の意味・わかりやすい解説

ヘンルーダ
Ruta graveolens; common rue

ミカン科の常緑多年草。地中海沿岸の原産であるが,薬用植物として日本各地で栽培された。茎は分枝し,下部は木化して高さ 30~90cmになり,全株に強い臭気がある。葉は互生し,数回羽状分裂して裂片は楕円形,腺点がある。初夏に,枝の先に集散花序をなし,黄色で,径約 1.5cmの花をつける。花は4数性のものと5数性のものがあり,どちらの場合もおしべは花弁数の2倍である。 蒴果は4~5室で油点が多い。全草中に 0.06%ほどの精油があり,フラボノール配糖体のルチンを含む。全草を薬剤とし,通経,ヒステリーに効があるという。

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百科事典マイペディア 「ヘンルーダ」の意味・わかりやすい解説

ヘンルーダ

南欧原産のミカン科の常緑多年草。高さ50cm内外,全株に強臭がある。明治初年に渡来し,現在では所々に植えられている。葉は互生,羽状複葉。6月ごろ集散花序をなして黄色の小花を開く。全草を風乾したものを芸香(うんこう)と呼び,茶剤として駆風,通経に用いる。繁殖は実生(みしょう)または株分けによる。

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