改訂新版 世界大百科事典 「ベチベル」の意味・わかりやすい解説
ベチベル
vetiver
khus-khus
Vetiveria zizanioides Stapf.
根から芳香油を採るために,また土壌浸食防止や風よけのために栽培されるイネ科の多年草。原産地はインドから東南アジアにかけての地域で,おもにアジア,アフリカ,南アメリカなどの熱帯,亜熱帯で栽培される。草丈は2mに達し,大きな株状に茂る。葉は細長く,長さ30~100cm,幅10mmほど。茎頂に長さ10~30cmの穂を出す。増殖は根分けにより,株間40cmほどに植え付ける。年間1~2回収穫できる。根を蒸留してベチベル油vetiver oilを採る。これは褐色で香りがあり,香水や化粧品,セッケンなどの香料として利用される。とくにこの油は揮発しにくいので,他の香料とまぜて,固着剤として用いられる。根を洗い,乾燥させてマットの詰物にし,また衣服の防虫香料に用いる。茎葉には芳香はないが,乾燥させて敷物やすだれ,扇などをつくり,屋根を葺くのに用いる。
執筆者:星川 清親
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報