日本大百科全書(ニッポニカ) 「アギラル鉱」の意味・わかりやすい解説
アギラル鉱
あぎらるこう
aguilarite
銀(Ag)の鉱石鉱物の一つ。銀の硫セレン化物。化学式だけからみると針銀鉱とナウマン鉱の中間に位置するが、原子配列上はナウマン鉱とおそらく同一、針銀鉱とは相違する。合成のAg2S-Ag2Seの2成分系の研究ではAg4S0.95Se1.05~Ag4S1.10Se0.90程度の幅があるとされ、Ag2SおよびAg2Seとの間にはそれぞれ化学組成上の間隙(かんげき)がある。自形は擬正八面体の骸晶(がいしょう)が知られている。
浅熱水性鉱脈型金・銀鉱床に産する。また自然銀、脆銀(ぜいぎん)鉱、針銀鉱、ナウマン鉱、淡紅銀鉱、ピアス鉱などとともに石英脈中に産し、方解石を伴う。日本では北海道恵庭(えにわ)市光竜(こうりゅう)鉱山(閉山)から産出が確認されている。同定は細粒の場合は針銀鉱様の黒色による。ナウマン鉱が分解して生成される緑青色のしみを生ずることもある。高温相は等軸。立方体を基調とする等軸の外形を残す仮晶の産出も知られている。命名は原産地メキシコのグアナフアトにあるサン・カルロスSan Carlos鉱山の所長アギラーPonciano Aguilar(1853―1935)にちなむ。
[加藤 昭 2015年12月14日]