日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベンヤミン」の意味・わかりやすい解説
ベンヤミン
べんやみん
Walter Benjamin
(1892―1940)
ドイツの文芸批評家、思想家。ユダヤ系実業家の子としてベルリンに生まれる。青年期にヘブライ思想とドイツ観念論の影響を受け、のちにマルクス主義思想にも接近した。G・ショーレム、E・ブロッホ、ブレヒト、アドルノらと交友。1933年パリに亡命、やがてフランクフルト社会学研究所(当時、在ジュネーブ、ついでニューヨークに移る)の研究員となる。パリ陥落の後、ナチスの手を逃れる旅の途上、ピレネー山中の小村にて服毒自殺。その作品は、特異な言語哲学と歴史哲学に根ざしつつ精緻(せいち)な文体をもって書かれ、対象の細部に対する鋭敏な感性をみなぎらせている。主著『ドイツ悲劇の根源』(1928)のほか、『一方通行路』(1928)などドイツ批評文学を代表する多数の著作がある。
[浅井健二郎 2015年4月17日]
『野村修編訳『ヴァルター・ベンヤミン著作集』全15巻(1969~1981・晶文社)』▽『川村二郎・三城満禧訳『ドイツ悲劇の根源』(1975・法政大学出版局/浅井健二郎訳・上下・ちくま学芸文庫)』▽『ヴァルター・ベンヤミン著、丘沢静也訳『ドイツの人びと』(1984・晶文社)』▽『浅井健二郎編訳『ベンヤミン・コレクション』全7巻(1995~2014・ちくま学芸文庫)』