ワルター(読み)わるたー(英語表記)Bruno Walter

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワルター」の意味・わかりやすい解説

ワルター
わるたー
Bruno Walter
(1876―1962)

ドイツ出身のアメリカの指揮者で、ピアノ奏者としても著名。20世紀前半を代表する大家の1人。9月15日ベルリンに生まれる。生地の音楽院で学んだのち指揮活動に入り、ケルンを振り出しにハンブルクブレスラウ(現ブロツワフ)、プレスブルク(現ブラチスラバ)の歌劇場を経て、1900年ベルリン宮廷歌劇場指揮者となる。マーラーに認められ、その下で01~12年ウィーン宮廷歌劇場副指揮者を務める。この間マーラーから音楽をはじめ多くのことを学び取ったが、それが後年マーラー解釈で一家をなす下地となった。13~22年ミュンヘン歌劇場音楽監督、23年アメリカデビュー、25~29年ベルリンのシャルロッテンブルク市立歌劇場指揮者、29~33年ライプツィヒ・ゲバントハウス管弦楽団指揮者。ナチスの政権掌握によりドイツを去ってウィーンに移り、35~38年ウィーン国立歌劇場ならびにウィーン・フィルハーモニーを本拠に活動した。38年ナチスがオーストリアを併合するやフランスに逃れ、さらに39年アメリカに移住。NBC交響楽団ニューヨーク・フィルハーモニー、メトロポリタン歌劇場などで活躍ののち、80歳になった56年に演奏活動から引退。その後は彼のために編成されたコロンビア交響楽団を指揮、録音に専念し、62年2月17日カリフォルニア州のビバリー・ヒルズで没した。優雅で豊かな情緒をたたえたその演奏は、19世紀のドイツ音楽のよき伝統を反映したものというべく、温かい人間性を感じさせるのが特色。とりわけマーラーとモーツァルトに、その特色が発揮された。著書に『グスタフ・マーラー』(1937)、『主題変奏』(1946)などがある。

[岩井宏之]

『村田武雄訳『マーラー 人と芸術』(1960・音楽之友社)』『内垣啓一・渡辺健他訳『主題と変奏――ブルーノ・ワルター回想録』(1965・白水社)』『L・W・リント編、土田修代訳『ブルーノ・ワルターの手紙』(1976・白水社)』『宇野功芳著『ブルーノ・ワルター――レコードによる演奏の歩み』改訂版(1979・音楽之友社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ワルター」の意味・わかりやすい解説

ワルター
Walter, Bruno

[生]1876.9.15. ドイツ,ベルリン
[没]1962.2.17. アメリカ合衆国,カリフォルニア,ビバリーヒルズ
ドイツ生まれのアメリカ合衆国の指揮者。本名 Bruno Walter Schlesinger。ベルリンのシュテルン音楽院で学び,ハンブルク,ウィーン,ミュンヘン,ベルリンの各歌劇場やゲバントハウス管弦楽団の指揮者を歴任。ナチスの台頭とともにフランスを経て,1939年アメリカに亡命ニューヨーク・フィルハーモニック,NBC交響楽団を指揮,アメリカのみならず全世界から注目された。国籍を 1911年ドイツからオーストリアに,1938年フランスに,1946年アメリカに移した。モーツァルトを得意としたが,指揮者として見出したグスタフ・マーラーにも心酔,マーラーの研究家,作品紹介者としても著名。

ワルター
Walther, Johann Gottfried

[生]1684.9.18. エルフルト
[没]1748.3.23. ワイマール
ドイツのオルガン奏者,作曲家,音楽辞典編集者。 1702年エルフルトのトーマス教会,1707年ワイマール市,1721年ワイマール宮廷のオルガン奏者に就任。 J. S.バッハは母方の遠縁にあたり,親交を結ぶ。作曲家としてはオルガンのためのコラール前奏曲や変奏曲が知られている。彼の『音楽辞典』 Musicalisches Lexicon oder Musicalische Bibliothec (1732) はドイツにおける最初の音楽百科辞典として重要。

ワルター
Walther, Johann

[生]1490. カーラ
[没]1570.3.25. トルガウ
ドイツの作曲家。本名 Blanckenmüller。 1517年ザクセン選帝侯フリードリヒの宮廷礼拝堂のバス歌手,26年トルガウのラテン学校の合唱長をつとめたのち,48~54年ザクセン選帝侯モーリツに招かれ,ドレスデンの宮廷音楽家をつとめた。ルターと親交をもち,プロテスタントの教会音楽確立に重要な役割を果した。作品には最初のプロテスタント聖歌集"Geystlich Gesangk Buchleyn" (1524) をはじめとする多くの宗教曲,器楽曲がある。

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