ペカン(読み)ぺかん(英語表記)pecan

翻訳|pecan

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペカン」の意味・わかりやすい解説

ペカン
ぺかん
pecan
[学] Carya illinoinensis (Wangenh.) K.Koch
Carya pecan Engl. et Graebn.

クルミ科(APG分類:クルミ科)カリア属の落葉高木。メキシコ北部からアメリカ合衆国中央南部原産。樹高60メートルに達するが、栽培下では15メートル程度に整枝する。葉は羽状複葉で、小葉は11~17枚の奇数からなり、若葉には毛が多い。芽は毛深く、黄色。雌雄同株。雄花は紐(ひも)状の花穂をつくり、前年枝の先端近くにつき、雌花は前年枝の発育中位の枝の先端近くにつく。5月ころに開花し、雄花先熟で、一般には他家受精が行われる。このため、栽培にあたっては受粉に好都合な開花期を示す他品種を混植するとよい。殻果は長楕円(ちょうだえん)形で、長さ約4センチメートル。核は比較的柔らかく、長さ約4センチメートルで先端がとがり、表面は褐色で滑らかである。内には、薄い種皮に包まれ肥厚した白色の子葉があり、食用とされる。栽培は1840年代に始まり、主要品種は野生種から選抜されたものが多く、センテニアル種によって接木(つぎき)繁殖が始まったのが1846年である。繁殖は共台(ともだい)または同属近縁種を台木とした接木による。植え付けは樹間12メートル以上とする。植え付け後6~10年で結実をみる。

 ペカンは脂肪70.7%、タンパク質2.1%、炭水化物8.5%で、100グラム当り728カロリーを示し、ナッツとして生食されるか、菓子や食用油原料とする。

 ペカンの近縁種には中国原産のカリア・カルサエンシスC. cathayensis Sargnt、北アメリカ原産のシャグバークshagbark hickory/C. ovata (Mill.) K.Koch、シェルバークbig shellbark hickory/C. laciniosa (Michx. f.) Loud.などのほか十数種が知られ、ペカンとともに一般にヒッコリーとよばれ、柔軟性のある良質の材は家具、スキーその他に広く利用される。

[飯塚宗夫 2020年2月17日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ペカン」の意味・わかりやすい解説

ペカン
Carya illinoensis; pecan

クルミ科の落葉高木で,北アメリカ南部の暖地の原産。日本への渡来は大正年間であるが,最近になって盛んに栽培されはじめた。高さ約 50mに達する。雌雄異株で,クルミ属と似ているが,雄花序が三叉して垂下することや果実が裂開することで区別される。秋に果実が熟して割れ,中の核が落ちはじめたら収穫し,外果皮を除去して乾燥させる。核皮はクルミより割れやすい。種子は 70%の脂肪分を含み,ナッツとして北アメリカで好まれており,最近は日本にも多く輸入されている。繁殖には種子のほかに根挿しや接木 (つぎき) をする。この属の植物の材はヒッコリー hickoryと呼ばれ,スキー用材として賞用される。

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