日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナッツ」の意味・わかりやすい解説
ナッツ
なっつ
nuts
殻に包まれた木の実をいうが、広義では乾燥果肉を利用するデートナッツや、豆やトウモロコシなどの草の実も含めていう。
ナッツ類の食用部分は、植物が次代となる胚(はい)あるいはそれを養う胚乳から構成されており、植物の諸器官のなかでは脂肪やタンパク質、炭水化物に富み、栄養分がもっとも多く蓄積されている。そのうえ取り扱いが簡便で、乾燥下では保存がきくため、人類の生活とともに利用が始まり、有史以前から重要な食物であった。遺跡の調査結果によると、日本では縄文時代にはすでにクリ、オニグルミ、ヒメグルミ、シイ、トチノキの実などが利用され、渋のあるものは渋抜きの方法も考案されていた。クルミ類の半栽培化や奈良時代以前に始まっていたクリの栽培化を除いては、野生からの収集利用が多く、トチノキの実やかちぐりなど、地方によっては神事とともに今日まで利用の諸方法が受け継がれているものもある。ヨーロッパではクリはローマ時代にはすでに栽培され、デートナッツ(ナツメヤシの実)やヘイゼルナッツ(ハシバミの実)は中近東での利用が古い。新大陸では中央アメリカのカボチャの種子(主としてミクスタ種、モスカータ種)はすでに5000年前ごろから利用されてきた。
今日、市場を通じ日本で一般的に利用されているナッツは約15種、それに地方的特産品など小規模生産品を入れて合計20余種がみられる。これらのうち地方的に利用される種類を除き、一般化された種類のなかでは、クルミ、ピーナッツ、ギンナンなどの一部を除いては消費の大部分を海外からの輸入に頼っている。近年における一般所得の向上、食生活の変化、好みの多様化につれ、一方ではナッツの加工、包装、流通の便も加わって、ナッツ類は時や所に関係なくだれでも利用できるスナック食品として、その種類を増し、普及を早めてきた。加工ナッツの消費は大部分がそのままつまみとしてテーブル用に利用され、他はクッキー、洋菓子、パン、チョコレート、キャラメルなどにナッツの特徴を生かして利用されている。テーブル用のナッツ類の多くは、加熱ののちに塩加減をし、あるいはさらに香辛料で味つけして、包装出荷されている。加熱加工法には、ナッツを乾燥のまま炒(い)るドライロースト、食用油をまぶして炒るオイルローストおよびマイクロウェーブ処理の3方法があり、どの方法をとるかナッツの種類により、また利用目的別に処理される。
クルミやハシバミの多いイタリア、マカダミアナッツの産地ハワイなどでは、各家庭でそれぞれに特有な殻割り器を備え、割りながら食べている。また、すりつぶして和(あ)え物とし、スライス片や粉砕片を、揚げ物の衣、料理の香りつけ、飾りなどに用いる。
[飯塚宗夫]