日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペロプス」の意味・わかりやすい解説
ペロプス
ぺろぷす
Pelops
ギリシア神話の英雄。リディアの王タンタロスの子。タンタロスは神々の寵児(ちょうじ)であったが、神の全知を試そうとわが子ペロプスを殺して料理し、神々に供した。神々はこれに気づいたが、デメテルだけはうっかり肩の部分を食べてしまった。しかし神々が彼を蘇生(そせい)させ、象牙(ぞうげ)で肩を補ったために彼の子孫は白い肩をもつとされた。
ペロプスは、ピサの王オイノマオスの娘ヒッポダメイアに求婚する。しかし、アレスの神馬を駆る王に戦車競走で勝たないと婿になれないので、彼は王の御者ミルティロスを買収して王の戦車の車軸に蝋(ろう)を使わせる。王の戦車はたちまち壊れ、王は手綱に引きずられて死ぬが、そのときペロプスたちに呪(のろ)いをかける。さらにペロプスは、ミルティロスに約束の褒美(ヒッポダメイアとの一夜の契りと王国の半分)を与えるどころか謀殺し、彼からも呪いを受ける。ペロプスは王国を手に入れ、近隣を制圧してこの半島をペロポネソス(ペロプスの島)と名づけた。また彼は、戦車競技を記念してオリンピア競技会を創始したとも伝えられる。
ペロプスへの呪いは子孫の代において実現され、息子のアトレウスとティエステスは兄弟で骨肉相食(あいは)む王位争いを演じ、孫のアガメムノンは妻に殺される。
[中務哲郎]