日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホッキョクダラ」の意味・わかりやすい解説
ホッキョクダラ
ほっきょくだら / 北極鱈
Polar cod
Arctic cod
[学] Boreogadus saida
硬骨魚綱タラ目タラ科に属する海水魚。北極海周辺およびバレンツ海や白海などその周辺海域に広く分布する。きわめて小形のタラで、最大体長38センチメートル、普通は25センチメートルほどのものが多い。体の前半部はやや肥大するが、後半部は細長い。背びれ3基、臀(しり)びれ2基で、腹びれは胸びれよりすこし前方にある。下顎(かがく)は上顎より突出し、その先端に1本の短いひげがある。鱗(うろこ)は小さくて、皮下に埋没する。尾びれの後縁はやや深くくぼむ。流氷の周りにいて、その動きによって接岸したり、沖合いに運ばれたりする。しかし氷のない沿岸、汽水域や河口の淡水域から水深600メートル近くでもみられる。水温、塩分濃度、濁度の変化に強い。また、魚類のなかではもっとも冷水性が強く、水温5℃以下でないと産卵しない。夏季は氷域の縁辺部にとどまり、接岸することはないが、冬季にはバレンツ海や白海の沿岸域で漁獲される。産卵期は海域によって異なり、アラスカ沖およびロシア海域では11月~2月、白海では1月~2月で、沿岸域や沿岸の氷の下で行われる。放卵数は9000~2万1000粒で、孵化(ふか)期間は4、5か月。仔魚(しぎょ)は小形の動植物プランクトンを、その後、アミ類、端脚(たんきゃく)類、コペポーダなどの甲殻類を食べる。3年で17センチメートル、5年で21センチメートルに達する。寿命はおよそ6~7年。ロシア、ノルウェー、デンマーク、ドイツでは中層・底層トロールによって漁獲される。1984年に世界で2万3709トン漁獲されたが、その後急激に減少し、1987年には半減した(国連食糧農業機関:FAOの漁業統計による)。魚粉や魚油にされる。海獣、海鳥、キツネなどの餌(えさ)になることもある。
[岡村 收・尼岡邦夫 2016年6月20日]