日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボイエル」の意味・わかりやすい解説
ボイエル
ぼいえる
Johan Bojer
(1872―1959)
ノルウェーの小説家。幼くして孤児となり、職を転々と変えたあとフランス、イタリアに長く滞在。出世作は『民族移動』(1896)だが、彼の名を一躍世界に知らしめたのは『嘘(うそ)の力』(1903)で、嘘をついて自分を弁護しているうち、しだいにその嘘を自分でも信じ込むようになる過程を描いた心理主義の傑作。第一次世界大戦に際しては、文明の虚偽を描いて単純な農村生活に救いをみいだす『大きな飢(うえ)』(1916)を出して歓迎を受けた。ロフォーテン諸島の漁夫たちを描いた『最後のバイキング』(1921)、『海辺の人々』(1929)などは海洋文学の不朽の名作。
[山室 静]
『宮原晃一郎訳『嘘の力他』(『世界文学全集18』所収・1931・新潮社)』