(読み)タイ

デジタル大辞泉 「態」の意味・読み・例文・類語

たい【態】[漢字項目]

[音]タイ(呉)(漢) [訓]わざ
学習漢字]5年
身や心の構え。広く、ありさま。ようす。「態勢態度擬態旧態形態姿態事態失態実態醜態重態状態常態酔態世態生態媚態びたい変態容態
[名のり]かた
難読態態わざわざ

たい【態】

かたち。すがた。ありさま。てい
voice文法で、動詞によって表される動作作用の性質・あり方とその表現のしかたに関する範疇能動態受動態など。なお、完了態のように、相(aspect)の意味にも用いることがある。

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精選版 日本国語大辞典 「態」の意味・読み・例文・類語

たい【態】

  1. 〘 名詞 〙 すがた。かたち。ありさま。ようす。姿態。状態。てい。
    1. [初出の実例]「たとへば事といふは、儀なり、威なり、態なり」(出典:正法眼蔵(1231‐53)菩提薩埵四摂法)
    2. 「総て水は、流動の態を常となせども」(出典:小学読本(1873)〈田中義廉〉四)
    3. [その他の文献]〔司馬相如‐封禅文〕

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普及版 字通 「態」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 14画

[字音] タイ
[字訓] すがた・わざと

[説文解字]

[字形] 形声
声符は能(たい)。〔説文〕十下に「なり」とし、能と心との会意字とするが、能・耐(たい)と通用する。〔楚辞、離騒〕に「修能(しゆうたい)」の語があり、佩と韻し、態字の義。また態に詐態の意があって嬌媚の態をいい、国語では「わざと」とよむ。

[訓義]
1. すがた、かたち、さま。
2. しぐさ、ようす。
3. わざがある、才能がある。
4. 国語で、わざと、わざわざの意に用いる。

[古辞書の訓]
〔新字鏡〕態 保志万々尓(ほしきままに)〔名義抄〕態 ワザ・サマ・スガタ・イコフ・ツカフ・ツカフマツル 〔字鏡〕態 サマ・カナフ・スガタヨシ・カタチ・ワザ・アシキママ・ココロ

[語系]
態t、能・耐nは声近く、また能を態に通用することがある。

[熟語]
態詐・態姿・態状・態色・態臣・態勢・態度・態貌
[下接語]
異態・逸態・含態・奇態・偽態・擬態・旧態・狂態・嬌態・形態・交態・詐態・姿態・事態・時態・実態・殊態・修態・羞態・醜態・重態・状態・常態・衰態・酔態・世態・生態・千態・俗態・多態・痴態・動態・万態・媚態・百態・風態・変態・本態・野態・幽態・容態・庸態・様態・老態・陋態

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改訂新版 世界大百科事典 「態」の意味・わかりやすい解説

態 (たい)
voice

動詞にみられる文法範疇の一つで,主語主語・述語)と動作の関係を示す。たとえば,英語のJohn kicked the dog.という文で〈kick〉という行為の主体であるJohnは主語としてあらわれており,その動作の及ぶ対象であるthe dogは目的語となっている。このような場合動詞は能動態active voiceである。これに対して,同一事実を視点を変えてThe dog was kicked by John.ということができる。ここでは〈kick〉という動作が向けられるthe dogが主語になっていて,前の文で主語としてあらわれた行為者(John)は前置詞に導かれている。このような場合動詞は受動態passive voiceであり,英語ではbe動詞+過去分詞の形をとる。英語などではこの能動と受動の二つの態だけが区別されるが,たとえばギリシア語などでは,さらに中間態middle voiceが存在する。これは主語自身にその動作が及ぶことを示すものであり,louō〈洗う〉という能動態形に対して,中間態のlouomaiは〈自分の身体を洗う。入浴する〉の意味である。そしてそれぞれ能動・受動・中間態は異なった活用形式をもつ。

 このように態は本来ギリシア語文法に由来する概念であるが,冒頭の定義に従い,他の言語に眼を向けてみれば,能動・受動・中間態だけでなく,より多くのものがそこに含まれる。たとえば,エチオピアアムハラ語では,mätta〈打つ〉,tämätta〈打たれる〉,asmätta〈打たせる〉のように,基本語幹形に,それぞれtä-やas-という接頭辞を付加することによってあらわされる受動態や使役態が存在する。また日本語では,態の違いは通常助動詞によって区別され,受動(受身),使役,可能,自発などの態を認めることができる。また〈しまる〉-〈しめる〉にみられる自動と他動の対立も,態における対立ということができる。

 なお,〈態〉のかわりに〈相〉という用語が用いられることもある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「態」の意味・わかりやすい解説

態【たい】

動詞にみられる文法範疇(はんちゅう)の一つ。主語と行為との関係において,主語がある行為を行う能動態,ある行為を受ける受動態(受け身),主語自身にその行為が関係する中間態に分かれる。多くの場合,受動態と中間態は一つの形をとる。他動詞には能動と受動の両態があるが,自動詞にはない。印欧語の古層では受動態あるいは中間態の形で能動態を表す動詞がある。
→関連項目自動詞助動詞

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「態」の意味・わかりやすい解説


たい
voice

動詞における文法範疇の一つ。相ともいう。文の主語が,定動詞の表わす動作に対してどういう関係にあるかを示すもの。動作主になっている場合の定動詞の形を能動態,対象になっている場合のそれを受動態という。サンスクリット語やギリシア語には,主語が自身を対象として動作を行う場合の形が活用体系のなかにあり,これを中動態と呼ぶ。本来は,このように動詞の語形替変の範疇をいったものであるが,広義では,助動詞を用いたり派生によったりして受身を表わす場合にも受動態と呼んで,態の概念を拡大解釈している。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【相】より

…このようにみてくると,日本語の〈読む〉―〈読んでいる〉にみられる〈……スル〉形と〈……シテイル〉形の対立は相の違いに基づくものであるということができるだろう。 なお,〈相〉という術語はvoice()の意味で使われることもあるので,その点留意する必要がある。【柘植 洋一】。…

※「態」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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