人智学(読み)じんちがく(英語表記)anthroposophy

翻訳|anthroposophy

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

人智学
じんちがく
anthroposophy

1913年ドイツの哲学者 R.シュタイナーによって始められた精神運動。彼は神を認識中心におく神智学を発展させ,認識の中心に人間をたてる。一面では科学的知識を採用しているが,主として神秘術 (オカルト) に基づいて真理をきわめ,救いを求めようとする。すなわち,人間は訓練によって透視力を得ることができ,それによって超感覚的世界を認識し自我を高揚し浄化しうるとする。

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百科事典マイペディアの解説

人智学【じんちがく】

ドイツ語Anthroposophie(ギリシア語アントロポス〈人間〉+ソフィア〈叡智〉に由来)の訳。狭義に,神智学から出発したR.シュタイナーの創設になる〈人智学協会〉(1913年)および〈一般人智学協会〉(1923年。本部スイスのドルナハ)の教説と運動の称。神智学の同様の秘儀の公開と霊性の開発を説くが,よりキリスト教的・社会的性格が強い。教育(いわゆる〈シュタイナー教育〉,自由ワルドルフ校),芸術(オイリュトミー),有機農業など活動は広範で,E.シュレー,R.リッテルマイヤー,A.シュワイツァー,H.ベックカンディンスキーら多様な後継者・支持者がいる。
→関連項目抽象芸術

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世界大百科事典 第2版の解説

じんちがく【人智学 Anthroposophie[ドイツ]】

ギリシア語のanthrōpos(人間)とsophia(叡智)の合成語。ヨーロッパ思想史の底流にある秘教的esotericな立場を表す用語として,16世紀のころから使われ(フィラレテスEugenius Philalethesの著書《アントロポソフィア・テオマギカ》1650参照),19世紀になると,人類学者トロクスラーIgnaz Paul Vital Troxler(1780‐1866)やヘルバルト派の哲学者ツィンマーマンRobert von Zimmermann(1824‐98)は一般の学術用語としても用いるようになった。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

人智学
じんちがく
Anthroposophieドイツ語

ルドルフ・シュタイナーが創始した神秘的学説とその教育運動をさす。Anthroposophieは、ギリシア語のanthropos(人間)とsophia(知恵)の合成語である。
 シュタイナーはハンガリーに生まれ、青年期にドイツ観念論哲学に熱中し、ウィーン大学に学ぶ。ワイマールでゲーテ全集の編集に携わる。ブラバッスキイ夫人の神智学運動に共鳴し、1902年ドイツ神智学協会事務局長に就任するが、その後彼自身の人智学の学説を立て、『オカルト科学』などの著書を発表する。
 1913年シュタイナーは神智学協会から分離独立して、独自の人智学協会を設立する。シュタイナーはヘッケルの系統発生理論、ゲーテの形態学、ダーウィンの進化論の影響を受けつつ、人智学を形成した。ゲーテの植物形態変成論によれば、植物は拡張と収縮を交互に行いつつ、上昇的に変成していく。シュタイナーは、人間の精神もまた、物質の次元から生成、発展して、高次の霊的世界に達することができると考える。すなわち、人は体と魂と霊とから成り、それらは三つの異なる世界に属している。人は「認識の小道」を通って、それぞれの世界を経由し、最後に霊的我を実現するという神秘的学説を打ち立てた。その実現のために彼は科学的方法を取り入れようとするのである。
 シュタイナーは最初スイスのドルナッハを本拠地とし、劇場を建てて劇を上演し、講演をしたりした。1919年にドイツのシュトゥットガルトに学校を設立し、「教育は芸術でなくてはならぬ」という理念のもとに、新しい教育方法を実践し、生徒の自己能力の開発を目ざした。それは6歳から12年間の一貫教育で、成績簿も教科書もなく、人格・精神の形成・陶冶(とうや)に力を注ぐフォルメンformen、オイリュトミーなど独自の芸術教育を行う。シュタイナー学校(バルドルフ煙草(たばこ)工場付属学校として創設されたのでバルドルフ学校ともいう)とよばれるこの学校は、ナチスの時代に閉鎖されたが、1945年に再開され、以後ドイツ国内と、日本を含む世界各地に数多く設立されている。[久米 博]
『F・カルルグレン著、高橋明男訳『ルドルフ・シュタイナーと人智学』(1992・水声社) ▽シュタイナー著、西川隆範訳『人智学指導原則』(1992・水声社) ▽子安美知子著『ミュンヘンの小学生』(中公新書)』

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世界大百科事典内の人智学の言及

【シュタイナー】より

…ドイツの思想家。人智学の創始者。クラリェベック(現在ユーゴスラビア領)に生まれ,ウィーン工科大学に学ぶ。…

※「人智学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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