ロシアスープのなかの代表的な煮込みスープである。建国の昔から存在しているスープ、シチーщи/shchiなどより新しく、19世紀ごろからつくられるようになった。日本の雑煮のように、地域によってモスクワ風、ウクライナ風、シベリア風、キエフ風などがあり、肉、野菜の切り方などに差異がある。また、緑のボルシチ、水兵のボルシチなど、数えれば40種にも及ぶ。
いずれも羊肉、牛肉、豚肉、ハム、ベーコン、魚などの一種と、そのほかキャベツ、タマネギ、ニンジン、セロリ、ジャガイモ、豆、ダイコン、カブ、緑色野菜、プラムなど好みのものを実だくさん入れた煮込みスープで、栄養豊かである。トマト、ビートの入った赤いスープが、ボルシチの特徴である。作り方としては、肉はすべて骨付きが好ましく、大きい塊のまま、またはぶつ切りなど骨付きで煮て、煮汁はブイヨンとする。ジャガイモ、キャベツはこのブイヨンで煮る。その中へ油炒(いた)めしたビート、タマネギ、ニンジン、セロリなどと、煮た肉を加えて煮込む。味つけは塩、コショウのほか、ニンニク、赤トウガラシをきかせるものもある。できあがったボルシチは皿に盛ってサワークリーム、刻みパセリをかける。トマト、トマトピューレを加えるので、サワーの酸味とともにさっぱりとした味になる。
[長屋美代]
ロシアとウクライナの最も代表的なスープで,テンサイを具とする。16世紀ごろまではテンサイそのものの名称であった。また地方によっては,酢漬けのキャベツを具とするシチューをもボルシチと呼んでいる。一般に肉あるいはキノコを煮出した汁を用い,具としてはテンサイのほかにジャガイモ,ニンジン,キャベツ,タマネギなどを入れる。脂肪分にはラードを,また好みによってニンニクを加えることがある。酸味を与えるためのトマトとテンサイのためにスープ全体が濃い赤色を呈する点に著しい特徴がある。肉の代りに魚を用いるような変種があるほか,日常的な家庭料理だけに地方ごとに特色をもっている。ハムやソーセージを具に加えるのがモスクワ風,香辛料を利かせ,一種のビスケットを添えるのがウクライナ風,具を細かくきざまないのがシベリア風である。
執筆者:中村 喜和
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…ブドウ酒やウォッカなどのアルコール飲料も最初から供する。(2)スープ キャベツを具とするシチューで,トマトとビーツで赤い色をつけたボルシチ,細かく刻んだ肉と野菜をたっぷり含んだサリャンカ,魚を煮出したウハーなどの熱いスープのほかに,夏向きとしてクワスをベースとする冷たいスープのオクロシカなどがある。(3)獣肉,鳥あるいは魚の料理 牛肉をサワークリーム・ソースで煮たベフ(ビーフ)・ストロガノフのようにロシアで考案されたもの,シャシリクのように中央アジアから入ったものなど多様性に富む。…
※「ボルシチ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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