工具としておもにドリルを使用し,穴あけ加工を行う工作機械。穴あけ加工のほか,リーマー通し,中ぐり,タップによるねじ立て,穴の入口部の加工(座ぐり,さらもみ,沈み座ぐり)なども行える。現在のようなボール盤の原型が作られたのは1850年代といわれている。ボール盤の名称は,オランダ語のボーアバンクboor bankに由来するが,これは江戸末期,工作機械がオランダから輸入されたためである。
(1)直立ボール盤 基本的には,垂直に設けられた主軸と,それを駆動する電動機や変速機構などが組み込まれている主軸頭,主軸頭を支えているコラム,コラムや主軸と直角に取り付けられ上下方向に移動できるようになっているテーブル,コラムを支えているベースからなる(図)。ドリルやリーマーなどの工具は,主軸端にあけられているモールステーパー穴に直接取り付けるか,またはモールステーパー穴に取り付けたドリルチャックに付けて使用する。主軸の回転は正転と逆転の両方ができ,その回転軸方向に自動,または手動送りができる。工作物は一般にテーブルの上に固定して加工する。なお,直径13mm以下の穴をおもに手送りであける小型の直立ボール盤のことを卓上ボール盤,または手加減ボール盤という。
(2)ラジアルボール盤 工作物を動かさずに穴をあける位置が変えられるように,コラムから大きなアームが突き出ていて,そのアームがコラムを中心にして旋回でき,かつそのアーム上を主軸頭が半径方向に移動できるようになっている。おもな種類としてはベース形,万能形,壁掛形,移動形がある。ベース形ラジアルボール盤は,ベースの上にテーブルを取り付けて直立ボール盤で扱うような小物部品の加工もすることができるし,またアームの先端に補助コラムを付ければ立て中ぐり盤でするような加工も行うことができる。万能ラジアルボール盤は,垂直な方向の穴あけだけではなく,例えばボイラーのような大きな工作物の側面にも水平な方向の穴があけられるように,主軸が任意の方向へ向けられるようになっている。壁掛けラジアルボール盤は,コラムが工場の壁,または柱に取り付けられた構造をしており,移動ラジアルボール盤は機械全体が水平案内面上を移動できるようになっている。
(3)多軸ボール盤およびその他 多軸ボール盤は,生産性を向上させるために多数の軸で同時に多くの穴をあけることができるようにしたものである。このほか,直立ボール盤の主軸頭を多数並べ,テーブルだけを共通にして,穴あけ,座ぐり,ねじ立てなどの加工が順次行えるようにした多頭ボール盤,工作物を固定しておき,タレット(数種の工具を取り付けてある台で,旋回できるようになっているもの)により工具を順次かえていくタレットボール盤や,直径10μmオーダーの非常に小さな穴をあけることができる特殊なボール盤などもある。
執筆者:西脇 信彦+伊東 誼
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
主としてドリルを用いて工作物に穴あけ加工を施す工作機械。語源は、オランダ語のboor-bankといわれている。工具には回転切削運動を与えると同時に送り運動を行わせる。ドリルによる穴あけのほかに、さらざぐり、ざぐり、タップ立て、リーマ仕上げ、深ざぐり、センター穴あけ、中ぐりなどの作業を行うことができる。ボール盤はもっとも広く用いられる工作機械で、種類も多く、直立ボール盤、ラジアルボール盤、卓上ボール盤、多軸ボール盤、多頭ボール盤、深穴ボール盤、ガーダーボール盤、ポータブルボール盤などがある。このうち多用されている機種は直立ボール盤、ラジアルボール盤、卓上ボール盤である。直立ボール盤は比較的小型の工作物を加工するのに適しており、主軸の位置が固定しているため、工作物を動かしてその位置決めを行う。ラジアルボール盤が用いられるのは工作物が大型で移動が困難な場合、または普通のボール盤主軸が穴あけ位置まで届かない場合などで、主軸頭が取り付けられたアームをコラムの周りに旋回させて位置決めし、穴加工を行う。卓上ボール盤は作業台上に据え付けて使用する小形のボール盤で、小形の工作物の穴あけを対象とした作業が行われる。
[清水伸二]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… なお,日本に金属を加工する工作機械が入ってきたのは江戸末期の1855年ころのことで,長崎に海軍伝習所を設置したときオランダから輸入したものであった。ちなみに当時,旋盤は旋転機盤,ボール盤は錐機盤と呼んでいた。国産の実用的な工作機械が作られるようになったのは,明治中ごろからである。…
※「ボール盤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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