1929年,アメリカの漫画家シーガーElzie Crisler Segar(1894-1938)が新聞連載漫画《シンブル・シアターThimble Theater》の中に登場させた船乗り。すぐに漫画の主人公となり,33年にはフライシャーMax Fleischer(フライシャー兄弟)によって短編アニメ映画のシリーズとなる。ホウレンソウを食べると怪力を得るのはこのアニメ版で強調され,恋人のオリーブOlive Oylのために恋敵のブルートBluto(ブルータスBlutusと呼ばれる場合もある)と戦う。幼いころ父親に生き別れた孤児で,独立独行,唯我独尊のポパイ哲学は〈I am what I am and that's all that I am.(おれはおれで,だからおれなんだ)〉に表現されている。ハンバーガー食いのウィンピーWimpy,四次元動物ジープJeep(四輪駆動車の愛称ジープの語源という説もある)など,不思議な人物や動物がポパイをとりまき,SF的な要素もある。シーガーの死後はバッド・サーゲンドーフなどが引き継いで描いている。37年,ホウレンソウの産地であるテキサス州クリスタル・シティにポパイの像が建てられた。
執筆者:小野 耕世
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
アメリカの漫画映画のキャラクター。たくましいあごにパイプをくわえ、二の腕に錨(いかり)のいれずみをした怪力の船乗りで、ピンチに際してホウレンソウを食べればさらに腕力100倍という設定。シガーE. S. Segarの漫画『シンブル・シアター』の脇役(わきやく)として1929年に登場したのを、フライシャー兄弟が漫画映画化し、32年に「ベティ(ブープ)・シリーズ」の1本に登場させるや好評を博し、33~42年に105本が製作された。共演者は、ガールフレンドのオリーブ・オイル、敵(かたき)役の巨漢ブルート、ハンバーガー好きのウィンピーなど。その後もフェーマス・スタジオが57年まで製作。さらに61~63年にTVシリーズもつくられたが、フライシャー時代の豪快な楽しさには遠く及ばない。
[森 卓也]
…若い女性むけに服飾,旅行,料理などの案内を大版のカラフルな誌面に盛った《アンアン》(1970),《ノンノ》(1971)が現れた。つづいて,男の学生を対象として都市生活と野外レジャーを話題とする《ポパイ》(1976),《ブルータス》(1980)が青春の新風俗をリードしている。また両誌はいわゆるカタログ誌としてのスタイルを確立した。…
…次いで世界最初の色彩長編漫画映画《白雪姫》(1937)を発表し,興行的にも大ヒットさせ,〈メリエスからチャップリンを含む映画的魔術の後継者〉とみなされ,〈アメリカ国民の神話と夢の担い手〉といわれるまでになる。ディズニーの開発・完成した音楽,色彩,ギャグ,物語性などにその後のアニメーション作家の大半が追随することになるのだが,ディズニー以前から独自の道を歩いていたフライシャー兄弟のみが,ニューヨークのナイトクラブの人気歌手ヘレン・ケーンをモデルにした《ベティ・ブープ》(1932‐39),E.C.シガーの雑誌連載漫画の主人公である怪力の水夫《ポパイ》(1933‐42)といった強烈なキャラクターの漫画映画シリーズを作り,荒っぽくナンセンスな笑いを提供し続けた。しかし,2本の長編漫画映画《ガリバー旅行記》(1939),《バッタ君町に行く》(1941)および劇画(コミック・ストリップ)の画調を生かした最初のアニメ《スーパーマン》(1941‐42)を最後の輝きとして消えていった。…
…ポパイ,ベティ・ブープなどの人気キャラクターをスクリーンに生かしたアメリカのアニメーション作家兄弟。兄のマックス・フライシャーMax Fleischer(1883‐1972)はオーストリアのウィーン生れ。…
※「ポパイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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