改訂新版 世界大百科事典 「マイマイガ」の意味・わかりやすい解説
マイマイガ (舞々蛾)
gypsy moth
Lymantria dispar
鱗翅目ドクガ科の昆虫。翅の開張は雄4~5.5cm,雌6~8cm。雄は黒褐色,雌はごく薄い灰褐色。色彩や大きさには個体変異があるばかりでなく,地理的な変化も著しい。ヨーロッパからシベリア,中国を経て日本全国に分布し,北アメリカには今から100年以上前にヨーロッパ産が移入され,全土に広がっている。一般に北海道産は小型で淡色,四国,九州の南部から南西諸島のものは白みが強い。年1回の発生で,成虫は夏に出る。雄はきわめて活発に昼間活動するが,雌は羽化した付近からあまり移動しない。
幼虫はサクラ,リンゴなどバラ科,クヌギ,クリなどブナ科,ハンノキなどカバノキ科,その他多くの植物の葉を食べ,しばしば大発生して山林,果樹園,庭園に大害を与える。若齢のとき糸を吐いて垂下するので,ブランコケムシと呼ばれている。老熟すると体長約6cm。黄色帯と黒色帯の縞模様で,各節に隆起があり,ことに背面隆起に生えているとげは鋭く,指先などに突きささると痛いが,毒はない。雌は,交尾後,樹幹など比較的低いところに300粒くらいの卵塊を産み,尾端の淡褐色の毛できっちりとおおう。卵のまま越冬し,4月ころ孵化(ふか)した幼虫は,若齢の間群がっているが,のちに分散する。春の終りから夏の初めに枝や葉間に糸を吐き,尾端部を固定して垂下し蛹化(ようか)する。アメリカでは森林への被害が大きいため,日本などから天敵の移入を盛んに試みている。
執筆者:井上 寛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報