マクリントック(読み)まくりんとっく(その他表記)Barbara McClintock

デジタル大辞泉 「マクリントック」の意味・読み・例文・類語

マクリントック(Barbara McClintock)

[1902~1992]米国遺伝学者。トウモロコシ研究からトランスポゾン存在発見、その分析を通じて細胞遺伝学に先駆的業績を残した。1983年ノーベル生理学医学賞受賞。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マクリントック」の意味・わかりやすい解説

マクリントック
まくりんとっく
Barbara McClintock
(1902―1992)

アメリカの遺伝学者。医者の三女として、コネティカット州ハートフォードに生まれる。コーネル大学農学部で遺伝学を学び、1923年に卒業、大学院に進学し、1927年に博士号を取得した。同大学の植物学専任講師、カリフォルニア工科大学、ドイツのカイザー・ウィルヘルム研究所(現、マックス・プランク研究所)の研究員を経て、1934年にコーネル大学で研究員となった。1936年ミズーリ大学の助教授に就任したが、1941年退職、翌1942年カーネギー・ワシントン研究所コールドスプリングハーバー支所の研究員、1967年同研究所の名誉研究員となり、死ぬまでコールド・スプリング・ハーバーで研究を続けた。

 長年にわたりトウモロコシの遺伝について研究したが、初期の研究では、トウモロコシ染色体を顕微鏡で観察し、表現型(外に現れた形質の特徴)と染色体の形態の相互関係を詳しく調べあげている。さらに、夏に交配実験を行い、冬にその実験結果の分析をするという研究を繰り返した結果、「動く遺伝子(トランスポゾン)」の存在に気づいた。そして、この遺伝子は染色体上を移動し、その際に他の遺伝子を活性化したり、抑制したりする調節機能をもつことを明らかにした。しかし、この研究は発表時にはほとんど無視された。やがて、バクテリアでも「動く遺伝子」が発見されて証明され、今日では遺伝子工学分野で利用されている。1983年「動く遺伝子」の発見によってノーベル医学生理学賞を受賞したが、植物の研究によってこの賞を獲得するのは、きわめて珍しいことである。

[編集部 2018年11月19日]

『エブリン・フォックス・ケラー著、石館三枝子・石館康平訳『動く遺伝子――トウモロコシとノーベル賞』(1987・晶文社)』『シャロン・バーチュ・マグレイン著、中村桂子監訳『お母さん、ノーベル賞をもらう――科学を愛した14人の素敵な生き方』(1996・工作舎)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マクリントック」の意味・わかりやすい解説

マクリントック
McClintock, Barbara

[生]1902.6.16. アメリカ,コネティカット,ハートフォード
[没]1992.9.2. アメリカ,ニューヨーク,ハンティントン
アメリカの遺伝学者。コーネル大学で植物遺伝学を専攻し,1927年に博士号を取得。同大学で講師をつとめ,のちワシントン D.C.のカーネギー研究所に転じる。同研究所コールドスプリングハーバー研究所で 40年以上研究を続けた。トウモロコシの実に現れる斑点の研究で,斑点の出現消失がトウモロコシの染色体内を動く遺伝子によって支配されていることを明らかにした。この動く遺伝子 (トランスポゾン ) の概念は,当時はなかなか認められなかったが,遺伝学上画期的な発見だった。 83年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。

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