マミズクラゲ(読み)まみずくらげ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マミズクラゲ」の意味・わかりやすい解説

マミズクラゲ
まみずくらげ / 真水水母
[学] Craspedacusta sowerbyi

腔腸(こうちょう)動物門ヒドロ虫綱ヒドロ虫目マミズクラゲ科に属する淡水産クラゲ。クラゲの類はそのほとんどが海産であるが、ごく少数が池沼など淡水域に生息しており、その代表的なものが本種である。本種以外の淡水産クラゲ数種も本種と一括してマミズクラゲと総称することもある。傘は半球状よりやや扁平(へんぺい)で無色、直径1、2センチメートル、傘縁(さんえん)には普通100~200本の触手がみられるが、大形のよく発達した個体では400本ほどにも達することがある。また、傘縁の触手間基部には平衡胞がみられ、これらは触手の約半分くらいの数である。傘内中央には比較的大形の口柄(こうへい)があり、その先端にわずかにひだをもった4個の口唇(こうしん)がみられ、その中央に口が開く。1個の環状管と4本の放射管がみられ、放射管の中ほどには生殖腺が発達する。

 このクラゲは雌雄異体で、普通、小形のポリプの世代があり、そのポリプから無性的な芽出によりクラゲはつくられる。ポリプは池沼内の水草の上とか枯れ葉枯れ枝の上などに付着して発見される。個々のポリプはきわめて小さく、高さ1ミリメートル以下、円筒形で、その先端に口が開く。口の周囲には刺胞がみられるが触手はまったくもっていない。このポリプは数個体で群体をつくっていることがある。ポリプからは無性的にクラゲ芽が生じ、それが遊離して幼クラゲとなるが、クラゲ芽の発達は毎年定期的に行われるわけではなく、数年にわたってクラゲが出現しないこともある。

 マミズクラゲは約100年ほど前にロンドンのリージェント公園の池で発見され、淡水にすむクラゲということで多くの人の関心をよんだ。その後、ほかのヨーロッパ各地、南・北アメリカ、オーストラリア、中国などのほか日本からも発見された。日本では1929年(昭和4)東京帝国大学農学部水産学教室の水槽で初めて発見されたが、とくに戦後は北海道から九州に至る各地からその発見が相次いで報告された。しかし、これらの報告のほとんどはクラゲの発見についてであり、ポリプの発見はきわめて少ない。これはポリプがきわめて微小でみいだしにくいためかと思われる。

 東京大学構内での本種の発見より前の1922年(大正11)に、本種とよく似てはいるが別種とされるCraspedacusta iseanaが、三重県津市井戸から新種として報告されたことがある。しかし、その後この井戸はなくなり、この種も絶滅したのではないかと考えられている。また、最近静岡県内の池よりさらに別種のユメノクラゲAstrohydra japonicaのポリプが発見されたが、そのポリプから生じたクラゲはマミズクラゲとはまったく異なった形態のものであった。

[山田真弓]


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改訂新版 世界大百科事典 「マミズクラゲ」の意味・わかりやすい解説

マミズクラゲ (真水水母)
Craspedacusta sowerbyi

ヒドロ虫綱ハナガサクラゲ科に属する淡水産の腔腸動物(刺胞動物)。ヨーロッパ,北アメリカ,中国などの温帯域に分布しており,日本では1928年に東京大学の研究室の水槽で初めて発見された。その後,報告がなかったが,46年以降は北海道から九州までの各地で8~10月に池や貯水槽などからしばしば見いだされるようになった。

 傘は直径2cmくらいまでの半球状で,無色透明。傘の縁には100~200本の長さがさまざまな触手が並んでいるが,これは成長の程度によって異なる。傘の中央には方形の胃腔があって,これより4本の放射管がでて傘の縁にまで達しており,放射管の中ほどには生殖巣が1個ずつつり下がっている。傘の中央下方に口柄がのび,下端には4個の口唇がある。また傘の縁にはヒドロクラゲ特有の縁膜がある。ポリプは全長1mmほどで,しばしば泥におおわれている。2~3個体が群体をつくり,口の周囲に刺胞群をもっている。触手はない。ポリプの一部がふくらんでクラゲが生ずる。中国では桃花魚または桃花扇とよんでいるが,これは桃の花が満開のころに出現するためといわれる。

 日本では津市の井戸から発見されたイセマミズクラゲC.iseanaが1922年に報告されているが,その後見いだされていない。淡水産のクラゲは世界に2属7種が知られている。
クラゲ
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マミズクラゲ」の意味・わかりやすい解説

マミズクラゲ

「淡水クラゲ」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内のマミズクラゲの言及

【腔腸動物】より

…ポリプとクラゲの両方の型をもつものが多いが,一つの生活史で両方の型が明らかにされている種類はそう多くはない。北海道の厚岸(あつけし)地方に産するキタクラゲや淡水産のマミズクラゲなどはクラゲの直径が20mmほどで容易に気がつくが,キタクラゲのポリプは高さ0.3~0.5mmで1本の触手をもっているにすぎず,またマミズクラゲのポリプは1mmほどで長い触手をもたず,ときに泥をかぶっているので簡単には発見できない。 ギサンゴやイタミレポラのようなヒドロサンゴ類は共肉が石灰質を分泌してかたい骨格をつくるが,ポリプには餌をとらえる指状ポリプと餌を消化する栄養ポリプの2種類があって分業している。…

※「マミズクラゲ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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