マリンスノー(読み)まりんすのー(英語表記)marine snow

翻訳|marine snow

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マリンスノー」の意味・わかりやすい解説

マリンスノー
まりんすのー
marine snow

海雪(かいせつ)ともいう。潜水艇の照明などで暗黒の海中を照らすと、あたかも降雪中のような物体を観察することができる。これをマリンスノーといい、大きさは数マイクロメートルから数センチメートル程度で不定形であるが、ときには1メートルに達する糸状になることもある。1951年(昭和26)に日本で最初の潜水艇「くろしお号」で海に潜った北海道大学水産学部の鈴木曻(のぼる)・加藤健司が命名した。マリンスノーは非常に壊れやすいので、マリンスノーだけを採取することは困難であり、その正体成因には諸説があるが、現在では次のように考えられている。マリンスノーは生物ではなく、有機物の凝集体である。海水中には生体植物プランクトンからの分泌死体の動・植物の分解によって、有機物が多量に溶け込んでいる。これが自然に凝集して、もやもやしたマリンスノーを形成するらしい。凝集物の内外では、バクテリア原生動物が活動している。

 海洋表層から深層までマリンスノーは存在していて、炭素量に換算して1立方メートル当り約200グラムで、生物量の10倍以上もあり、深海でも1立方メートル当り5~50ミリグラムに達している。高速度で沈降する動物プランクトンの糞粒(植物プランクトンがぎっしり詰まり、膜で包まれている)とともに深海動物の重要な栄養源になっている。

[佐野 昭・高橋正征]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マリンスノー」の意味・わかりやすい解説

マリンスノー
marine snow

海雪ともいう。海中をゆっくり沈降する降雪のようにみえる微小物体の総称バチスカーフなど潜水球で潜水したときに雪のような光影が認められたため,この名がつけられた。バチスカーフの探検によれば,日本海溝では表層水から数千mの深海まで分布する。マリンスノーは表層ほど形が大きく,その量はプランクトンの多い海ほど多い。正体は不明な点が多いが,ケイ藻など植物性プランクトンの死んだ細胞,死にかかった細胞,分解過程にある細胞物質が機械的に結合したものと推定される。電子顕微鏡で数千倍に拡大すると分解物の集ったものが見える。プランクトンネットで海水をろ過しても,ほとんど粉砕されてネットの目を通過してしまう。マリンスノーの誕生,成長,消滅の機構の解明は今後の研究課題とされている。膨大な量からみて,海の食物連鎖のうえで重要視され,また石油の原物質とみる考えもある。

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