日本大百科全書(ニッポニカ) 「マンデル」の意味・わかりやすい解説
マンデル(Robert Alexander Mundell)
まんでる
Robert Alexander Mundell
(1932―2021)
カナダの経済学者。オンタリオ州キングストン生まれ。ブリティッシュ・コロンビア大学、アメリカのワシントン大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)、イギリスのロンドン・スクール・オブ・エコノミックスなどで学び、1956年にMITで博士号を取得した。ブリティッシュ・コロンビア大学、コロンビア大学、スタンフォード大学で教え、ジョンズ・ホプキンズ大学教授、国際通貨基金(IMF)シニア・エコノミスト、ジュネーブ大学教授、シカゴ大学教授、ウォータールー大学教授などを経て、1974年にコロンビア大学教授に就任。1999年に、「異なる為替(かわせ)相場における金融・財政政策の効果の分析、および最適通貨圏に関する分析」でノーベル経済学賞を受賞した。
固定為替相場制の1960年代前半に、マーカス・フレミングMarcus Fleming(1911―1976)とともに、金融・財政政策が国内経済の安定と為替相場にいかなる影響を与えるかを理論的に検討した。変動相場制では財政政策よりも金融政策が有効であるとする「マンデル‐フレミングモデル」を構築し、アメリカをはじめ西側諸国や世界銀行(国際復興開発銀行)などの経済政策に大きな影響を与えた。また共通通貨の採用が実利にかなう地域や国家群としての最適通貨圏成立の条件を検証し、最適通貨圏が物価の安定と労働力の自由移動に役だつとした最適通貨圏の理論を樹立し、ヨーロッパで統一通貨ユーロを導入する際の理論的支柱となった。
[金子邦彦]
『渡辺太郎・箱木真澄・井川一宏訳『国際経済学 新版』(2000・ダイヤモンド社)』▽『柴田裕訳『マンデル貨幣理論 新版』(2000・ダイヤモンド社)』
マンデル(Ernest Mandel)
まんでる
Ernest Mandel
(1923―1995)
ドイツのフランクフルトに生まれ、その後ベルギーに移住したマルクス経済学者。トロツキー死後のもっとも代表的なトロツキー主義の立場にたっていた。10代前半でベルギーのトロツキスト運動に参加。ブリュッセル自由大学を卒業後、パリに留学。第二次世界大戦中はレジスタンスの闘士、戦後はベルギーの労働運動の指導者。第四インターナショナル(統一書記局派)の指導者として活躍した。
その主著『後期資本主義』は、英語、フランス語、ドイツ語、日本語などに訳されて、大きな反響を呼び起こした。経済理論の領域における業績としては「長期波動論」が有名である。
[田口富久治]
『岡田純一他訳『現代マルクス経済学』全4巻(1972~74・東洋経済新報社)』▽『飯田裕康他訳『後期資本主義』全3巻(1980~81・柘植書房)』▽『岡田光正訳・解説『資本主義発展の長期波動――ケンブリッジ大学特別講義録』(1990・柘植書房)』