マンリョウ(読み)まんりょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マンリョウ」の意味・わかりやすい解説

マンリョウ
まんりょう / 万両
[学] Ardisia crenata Sims

ヤブコウジ科(APG分類:サクラソウ科)の常緑低木。高さ0.3~1メートル。葉は互生し、長楕円(ちょうだえん)形で長さ5~12センチメートル、質は厚く光沢があり、縁(へり)に波状の鋸歯(きょし)があり、その凹部の組織内に腺体(せんたい)がある。7月、枝先に紅色の細点がある小さな白色花を散状または散房状に開く。花冠は深く5裂し、径約8ミリメートル。雄しべは5本。果実球形で径約6ミリメートル、赤く熟し、翌年の春までついている。暖地の林内に生え、関東地方以西の本州から沖縄、および朝鮮半島、中国、台湾、東南アジア、インドに分布する。黄実や白実のもの、葉の斑(ふ)入り、縁の縮れたものなど園芸品種が多く、庭木鉢植えにして観賞する。また正月センリョウアリドオシとともに飾る。

小林義雄 2021年3月22日]

文化史

同属のヤブコウジ(十両)がヤマタチバナの名で『万葉集』に登場するのに比べ、認識は遅れ、『多識編』(1612)でマンリョウの中国名硃砂根(すさこん)にアカキがあてられたのが初出で、『本草薬名(やくめい)備考』(1678)にも朱砂根にアカキが使われている。中国では全株や根を活血去瘀(きょお)(うっ血)、清熱降火、消腫(しょうしゅ)解毒、去痰止咳(きょたんしがい)などの薬にする。マンリョウ系の名は18世紀末ころから使われ始めたが、初めはまん竜、万量、万里ゃうなどと綴(つづ)られ、文政(ぶんせい)(1818~1830)のころから万両が庶民に定着し始めた。万両はカラタチバナの中国名百両金に対応した名と考えられる。カラタチバナは18世紀末に大流行し、66品種を数えたが、マンリョウは江戸の終わりにブームとなり、『草木奇品家雅見(そうもくきひんかがみ)』(1828)には斑(ふ)入りや葉変わり12品種が載っている。さらに、明治の『硃砂根銘鑑』(1901)には53品種が記録されている。

[湯浅浩史 2021年3月22日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マンリョウ」の意味・わかりやすい解説

マンリョウ(万両)
マンリョウ
Ardisia crenata

ヤブコウジ科の常緑小低木。アジアの暖温帯に広く分布し,日本では関東地方南部より西の暖地の林内に生える。観賞用にも栽培される。茎は直立し高さ 30~100cmとなり,まばらに分枝する。全体に毛がなく,葉は互生し,長さ7~12cmの長楕円形で鋸歯の間に内腺体があり,表面には明点と黒褐色の点がある。7月頃,散房花序を頂生し,白色の5弁の小花を集めてつける。花は径 8mmほどで星形であるが,基部は合着して浅い杯状をなす。果実は球形で赤熟し冬から春まで残るので,光沢のある葉とともに正月の生け花としてよく知られている。栽培品種にキミノマンリョウ,シロミノマンリョウという果実の色変りがある。

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