ミズカビ(読み)みずかび

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミズカビ」の意味・わかりやすい解説

ミズカビ
みずかび

水生菌類一般をいうこともあるが、狭い意味では卵菌類ミズカビ目のミズカビSaprolegniaの菌をいう。ミズカビ属の菌には、魚卵などに寄生するものもあるが、多くは水中にある動植物遺体中に仮根を張り、周りの水中に菌糸体が伸びる。菌糸体は管状で、これに仕切りができて遊走子嚢(のう)・造精器、1ないし数個の卵をもつ生卵器が形成される。遊走子には2回遊泳性と二形性がみられる。遊走子嚢から出た一次遊走子は洋ナシ形で、前端に尾型と羽型の1組の鞭毛(べんもう)があり、これが発芽して生じた二次遊走子は腎臓(じんぞう)形で、くぼんだ側面に1組の鞭毛がある。羽型鞭毛は前向き、尾型鞭毛は後ろ向きである。これが発芽すると、菌糸または同形の遊走子を生ずる。

[寺川博典]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミズカビ」の意味・わかりやすい解説

ミズカビ(水黴)
ミズカビ
Saprolegnia; water mold

藻菌類卵菌類ミズカビ目ミズカビ科。淡水産の水生菌。水中の動物の死体や有機物を多く含んだ植物体が水中に落込んだものなどに着生する。池,水溝,水田などにみられる。菌糸は長い円筒形でところどころで分岐する。先端に円筒形,棍棒形の1次的遊走子嚢を生じる。遊走子は球形の休止体を経て,次々と2次,3次と遊泳し,豊富な有機物を捜す。有性生殖は生卵器と造精器との配偶子嚢接合により生卵器中に接合子を多数生じる。ミズカビのなかには魚類の卵や幼生に寄生する S. parasiticaがあり,サケマスの孵化場などで害を及ぼすことがある。

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