翻訳|rhizoid
維管束植物の胞子体には地下器官として,植物体の支持や水の吸収を行う根が独立の器官として分化している。それ以外の植物群や世代には,ふつう付着・吸収を営む根に似た構造があり,それらを総称して仮根という。菌類では菌糸のうち根のような形状をとるものをいい,固着のためのものが多い。地衣類は植物体の裏面の皮層に菌糸でできた仮根(仮根菌糸という)をつくる。藻類の仮根には単細胞のものから多細胞で分枝するもの(フウセンモなど)までいろいろあり,大型の褐藻類の仮根のようにholdfastと呼ばれる偽組織をつくるものもある。コケ植物のうち,苔(たい)類では裏面中肋部の表皮細胞の突起で単細胞性であり,蘚(せん)類では茎葉体の下部に多細胞の仮根を生じ,分枝することもある。シダ植物の前葉体では下半分の裏面に,単細胞かまたは2~3細胞になる糸状の仮根をつける。このように,外見や機能上の相似で仮根と総称されているだけなので,組織上の相同性は認められない。
執筆者:岩槻 邦男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
藻類、コケ植物、シダ植物の前葉体など根をもたない植物や菌類の表面に生じる単細胞または多細胞の糸状の根状部をさすが、構造的には維管束植物の根の根毛に類似し、吸収、固着の機能をもつものをいう。藻類ではフウセンモのように単細胞の一部が複雑に突出した形、車軸藻(しゃじくも)類のように多細胞で分枝した形のものがある。褐藻類では仮根が集まって維管束植物の根のような吸着器官をつくるが、これは偽組織で、維管束などの組織分化はみられない。ゼニゴケ類の配偶体の裏面には単細胞の仮根ができ、スギゴケ類では茎状部の基部に1細胞列の仮根ができる。シダ植物の前葉体の基部の下面には単細胞または2、3の細胞からなる仮根がある。地衣類の仮根は下面の皮層から出た固着の働きをする菌糸をさすが、髄層や皮層の菌糸と区別してとくに仮根菌糸とよばれる。菌類ではクモノスカビにみられるような固着の働きをする菌糸を仮根とよぶ。
[西野栄正]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…やがて原糸体に芽が生じ,それが大きく発達して配偶体ができ上がる。配偶体はゼニゴケのように葉状,またはスギゴケのように茎と葉が分化し,糸状の仮根rhizoidをもつ。造卵器はフラスコ形で長いくびをもち,造精器は棍棒状または球状。…
…配偶体は一般に匍匐(ほふく)し,葉状または茎と葉が分化している。仮根rhizoidは単細胞。葉は茎の両側面と腹面の3列につくが,腹面の葉(腹葉という)は退化しているものが多い。…
…やがて原糸体に芽が生じ,それが大きく発達して配偶体ができ上がる。配偶体はゼニゴケのように葉状,またはスギゴケのように茎と葉が分化し,糸状の仮根rhizoidをもつ。造卵器はフラスコ形で長いくびをもち,造精器は棍棒状または球状。…
…配偶体は一般に匍匐(ほふく)し,葉状または茎と葉が分化している。仮根rhizoidは単細胞。葉は茎の両側面と腹面の3列につくが,腹面の葉(腹葉という)は退化しているものが多い。…
…共生藻はゴニジアgonidiaとも呼ばれ,緑藻類やラン藻類に属し,トレブクシア属Trebouxia,ネンジュモ属Nostoc,スミレモ属Trentepohliaが多い。 地衣体の外部形態はさまざまであるが,地衣体が未分化で基物に密着する固着地衣類(例,チズゴケ),地衣体が葉状で背腹性があり,裏面に仮根(偽根)や臍状体(さいじようたい)をもつ葉状地衣類(例,ウメノキゴケ,イワタケ),地衣体の基部で基物に付着し,立ち上がったり垂れ下がったりする樹枝状地衣類(例,サルオガセ,ハナゴケ)の三つに大別できる。地衣体の内部構造は典型的な葉状地衣類では,保護組織の皮層と同化組織の藻類層(ゴニジア層)や髄層medullaに分化する。…
※「仮根」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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