天球上の恒星や星座の位置,それらの日周運動などを簡便に知るための天球模型。天球の球面上に投影された星座,天の川などを天球儀の外表面上に描き,外から見るようになっているため星座の形や相互配置は東西が逆になっている。恒星の位置のほか星座を表す画像やその境界線,赤道,黄道なども記された。エウドクソスはすでに紀元前4世紀に天球儀を作ったが,現存する最古のものは前200年ごろに作られたナポリのファルネーゼ家の,巨人アトラスが天球をかついだ大理石製のものである。現存する最古のアラビア天球儀は1081年ごろバレンシアで作られた天球儀で,銀小盤で作られた約150個の星が球面にはめこまれている。また1559年のトルコ製の木製天球儀がベネチアのパラッツォ・ドゥカーレにある。ヨーロッパの初期の天球儀は占星術に使用されたが,1535年アピアヌスが作ったものが有名で,さらにG.メルカトル,W.J.ブラウも相ついで地球儀とペアで製作した。チコ・ブラーエのシンチュウ製のものはコペンハーゲンにあり,またグロイターもチコの観測に基づいて1636年に天球儀を作った。珍しいものでは1739年にロンドンで作られたガラス製天球儀がある。中国では渾象ないし渾天象と呼ばれたが,耿寿昌が前1世紀に渾象を作った。蘇頌も11世紀に製作したが,現存する代表的なものはフェルビースト(南懐仁)が17世紀に作った北京観象台にある天球儀である。日本の天球儀は,いつ渡来したのか,最初に製作されたのは,いつかについては定かではない。現存する天球儀では渋川春海作のものが和製最古のものとされ,日光東照宮にある。
→渾天儀
執筆者:橋本 敬造
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地球儀が地球表面の水陸分布や地形、経緯度線などを表すように、われわれを取り巻く空を一つの球に見立て、星や星座、天の赤道や黄道、時圏、等赤緯線(天球上の赤緯の等しい点を結ぶ線。赤緯等圏)などを描き表し、実際の天球での諸現象、たとえば天体の出没や高度・方位などを読み取れるようにした装置。ただし、球の内側から見るようにはつくれないので、天球の外から見た天球の状況(現実に見るものの裏返しになる)を球面に描く。一般に天球儀は、単なる天の図ではなく、実用に供されていた。すなわち、模型天球を、天の南北極(SおよびN)を通る軸の周りを回転できるようにし、この軸が水平環(水平環を含む平面は模型天球の中心を通るようにする)と緯度に等しい角だけ傾けられるようにしておく。水平環に方位目盛りを刻み、さらに水平環から天体までの角を測れるような尺度をつくっておくと、天体の任意の時刻の高度・方位、出没方位が読み取れる。また日周運動の状況、あるいは季節など適当な条件を与えれば時刻を読み取ることもできる。このような測定ができるようにつくられた一式の装置が天球儀で、かつてはヨーロッパなどで天文学上の実用器機としてはもとより、芸術品としても盛んに製作された。日本でも江戸時代に最初の天球儀がつくられた。
[大脇直明]
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…ギリシア科学を受けついだイスラム圏でも地球儀は作られ,1267年元代の中国に伝来しているが,中世イスラム圏製の地球儀の現存は知られていない。天球儀は1080年製のものがフィレンツェに,1279年製がドレスデンに残っている。現存最古の地球儀は1492年作成のベハイムの作品で,ヨーロッパとアジアの間の大洋の西寄りにジパング島が描かれている。…
※「天球儀」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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