ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミヤルデ」の意味・わかりやすい解説
ミヤルデ
Millardet, Pierre-Marie-Alexis
[没]1902.12.15. ボルドー
フランスの植物学者。初めて実用化された殺菌剤,ボルドー液の開発者。またフランスのぶどう園をアブラムシ科の昆虫フィロキセラ(ブドウネアブラムシ)による壊滅的な被害から救った。ドイツのハイデルベルク大学とフライブルク大学で学んだのち,フランスに戻り医学と科学の博士号を取得,1869年ストラスブール大学の植物学准教授となった。3年後ナンシーに移住し,1876~99年ボルドー大学植物学教授。1858~63年,アメリカ合衆国から輸入された接木用のブドウの木を介してヨーロッパにフィロキセラが持ち込まれ,大規模な虫害が発生した。ミヤルデは耐性のあるアメリカブドウをヨーロッパ種の接木の台木として導入し,この虫害を制圧した。フィロキセラとともに野菜や果物,特にブドウに被害を与えていたのがブドウべと病(プラズモパラビチコラ)だった。フランスのメドック地方の農民は何世紀にもわたり,ブドウ泥棒対策としてブドウの木に硫化銅と石灰と水の濃厚な混合液をふりかけていた。1882年ミヤルデはこの混合液がべと病の発生を抑えていたことに気づき,3年間の実験と検査を経て,その有効性を "Journal d'Agriculture Pratique"に発表した。この化学薬品の組み合わせはのちにボルドー液として知られ,世界中で広く使用された初の殺菌剤となった。その開発は農業技術の新時代を切り開いたといえる。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報