南西フランス,ジロンド湾(川)と大西洋に挟まれた三角形の半島状の地域région。近年,ジロンド湾岸は,ル・ベルドンのコンテナー埠頭や石油貯蔵基地,ポーイヤックの石油コンビナートなど,港湾・工業地帯として整備,開発されている。また,グラーブ岬とスーラックを中心とした半島先端部や,大西洋岸の海岸砂丘とその内側に広がるウタン,ラカノーの二つの沼の周辺では,海水浴場や水上スポーツ施設が整備され,別荘地やキャンプ場の建設が進んでいる。さらに,内陸の砂地の平野には19世紀後半から植林された松林が広がっているが,とりわけ,この地方が有名なのは,ジロンド湾沿いの段丘で産出する赤ブドウ酒によってである。とくに上流ボルドー寄りのオー・メドック地方には,マルゴーMargaux,ポーイヤックPauillac,サンテステーフSaint-Estèpheの町を中心に,マルゴー,ベシュベルBeychevelle,ラトゥールLatour,ムートン・ロトシルドMouton-Rothschild,ラフィットLafiteなど最高級の赤ブドウ酒を産するシャトーが点在している。この地方は,地形上,大西洋からの西風が松林で遮られ,ジロンド川の豊かな流れにより寒さを和らげられ,さらにやせた石灰質の砂利状の土壌はよく太陽熱を吸収,放射するため,収量は少ないが,きわめて良質のブドウを産出するのである。
18世紀,ボルドーの高等法院貴族らにより,この地方で本格的なブドウ栽培が始められ,当時知られるようになった熟成技術により,主としてイギリスへ輸出するための高級赤ブドウ酒が作られた。19世紀には,ラフィット,ロスチャイルド,ペレールら大銀行家や貿易商の投資が盛んで,今日見られるシャトーの大部分はこの頃建てられたものである。1855年のパリ万国博覧会を機会に,ボルドー地方産出ブドウ酒の格付けが行われたが,赤ブドウ酒第1級は,グラーブ地域のオー・ブリヨンHaut Brionのほか,メドック地域のラフィット,マルゴー,ラトゥールの3銘柄(1973年にムートン・ロトシルドが加わる)により占められた。なお,この5階級の格付けは,ほとんど変化なく今日まで続いている。こうした名声により大経営は資本を蓄積し,1880年代の病虫害の危機も克服した。しかし,第2次大戦後は,多くのシャトーがあまりにも伝統墨守の経営のため,経営困難に陥り,内外の商社に買収されており,とくに1973,74年,価格崩落の危機後,その傾向が著しい。なお,こうしたシャトーのかたわらに,多数の中小農民の経営するブドウ畑が存在し,協同組合組織により優れたブドウ酒を製造している。
執筆者:井上 尭裕
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
フランス南西部、ジロンド県にある地域名。ビスケー湾とジロンド川の間の幅平均10キロメートル、長さ80キロメートルの細長い地帯で、砂礫(されき)質の沖積平野がブドウ栽培に適し、最高の赤ワインを産することで知られる。上メドック、下メドックに分けられ、上メドックが良質のワインを産する。
[青木伸好]
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