果樹や野菜などの病害の防除に用いられる殺菌剤。一般に硫酸銅自身は殺菌力を有することが知られていたが,単独で用いると植物に薬害を生ずる欠点がある。しかし,硫酸銅に石灰と水を加えて用いると,薬害が著しく減少し,殺菌剤として用いることができる。1885年,フランスのボルドー地方で発生したブドウのべと病(露菌病)に本剤が有効であることが,フランスの植物学者ミラルデP.M.A.Millardetによって見いだされ,その土地の名にちなんでボルドー液と命名された。以後,現在に至るまで広く用いられている殺菌剤である。
硫酸銅と生石灰と水の混合比により,いろいろな処方のボルドー液が知られているが,その一般組成はCuSO4・xCu(OH)2・yCa(OH)2・zH2Oで示される。この薬剤が有効な病害は,ミカンのそうか(瘡痂)病,かいよう(潰瘍)病,リンゴの黒点病,赤星病,ナシの黒斑病,赤星病,黒星病,カキの炭疽(たんそ)病,落葉病,ブドウのべと病,晩腐病,黒痘病,各種野菜のべと病,炭疽病,疫病などである。哺乳動物に対する急性毒性は,50%致死量LD50=300mg/kg(ラット,経口,硫酸銅として)である。ボルドー液と類似の薬効を有する殺菌剤として,塩基性硫酸銅(CuSO4・3Cu(OH)2),塩基性塩化銅(CuCl2・3Cu(OH)2),水酸化第二銅(Cu(OH)2)が知られている。ボルドー液は,植物病原菌のエネルギー代謝をはじめ,生体において重要な生化学反応に重要な役割を果たしているSH酵素(スルフヒドリル酵素)を不活性化することによって殺菌力を発揮する。
執筆者:高橋 信孝
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硫酸銅と生石灰で自家調製する殺菌剤。多種類の病原菌に保護剤として有効であるが、治病的効果は期待できない。使用作物の種類によって硫酸銅と生石灰の使用量を変更するので、その組成の一般式はCuSO4・xCu(OH)2・yCa(OH)2・zH2Oで表される塩基性硫酸銅である。石灰乳の中へ硫酸銅水溶液を徐々に加えてアルカリ側で反応させないと、懸濁(けんだく)液の粒子が粗くなって殺菌効果を発揮しない。製法の巧拙により効力が変動する。1885年フランスのボルドー地方でブドウの盗難防止に硫酸銅と石灰の混合液を用いたところ、べと病の被害が少なくなったことから、ボルドー大学のミラルデPierre-Marie-Alexis Millardet(1838―1902)によって殺菌力が発見され、全世界に普及した。日本では1897年(明治30)茨城県牛久(うしく)のブドウ園で使われてから普及した。
[村田道雄]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
硫酸銅水溶液を石灰乳によくかきまぜながら加えて調製された,古くから用いられている農薬.フランスのボルドー大学教授がブドウのため,硫酸銅と生石灰の混合液を散布したところ,産地で大発生していた,べと病の被害がなかったことをヒントに実験を行い,1885年に発表した.作物や病害の種類により調合割合が異なり,ボルドー液1 L 中に含まれる硫酸銅および生石灰の質量(g)でその調合割合を表す.たとえば,1 L に硫酸銅4 g,生石灰4 g を含むボルドー液を4-4式とよぶ.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…グリセリンに可溶。殺菌剤,ガラスの着色剤,材木の防腐に用いられ,石灰乳との混合物はボルドー液といい,ブドウのべと病予防に用いられる。これはCu2+のべと菌に対する強い殺菌力によるもので,このほかジャガイモ,トマト,バナナ等多くの作物に対し使用されている。…
※「ボルドー液」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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