改訂新版 世界大百科事典 「ムカゴサイシン」の意味・わかりやすい解説
ムカゴサイシン
Nervilia nipponica Makino
常緑樹林の林床にまれに生える小型の地生ラン。葉と花が別々の時期に出るのが特徴。和名は球茎をヤマノイモのむかご(珠芽),葉をウスバサイシン類になぞらえたもの。小さな球茎がある。5~7月,10cmくらいの花茎に花を1個つける。葉は花後に出る。葉はただ1枚のみ,芽の中では扇のようにたたみこまれており,それが開くと葉柄は長く,葉身は五角形状心形となり,通常のランの葉とはかなり異なる。花は茶褐色であまり開かず,径1cm程度。唇弁は白色で紅紫色の斑点がある。関東南部以西の本州,九州,琉球に分布し,特に利用されることはない。
ムカゴサイシン属Nerviliaは花と葉が別々の時期に出たり,心臓形の葉が1枚しかないことなどで特徴づけられ,約80種が旧世界の熱帯から亜熱帯に分布している。少数種が薬用に,また地下の球茎が食用に利用される。
執筆者:井上 健
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報