ムカシヤンマ(読み)むかしやんま

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムカシヤンマ」の意味・わかりやすい解説

ムカシヤンマ
むかしやんま / 昔蜻蜓
[学] Tanypteryx pryeri

昆虫綱トンボ目ムカシヤンマ科に属する昆虫。九州から青森県まで分布し、5~7月に現れるが、山間渓谷に生活し、普通種ではない。体は頑丈で腹長50ミリメートル、後翅(こうし)長47ミリメートル、黄色の地に黒色斑紋(はんもん)があり緩やかに飛ぶ。幼虫は谷間の湿地蘚苔(せんたい)類や湿土の中に孔(あな)をつくりその中に隠れて、孔の入口付近を通過するほかの昆虫をとらえて食べる。この種は遺存的な一群で、世界に10種だけ知られるが、日本にはムカシヤンマ1種だけを産し、ほかの9種はオーストラリアに4種(ペタルラ属Petalura)、ニュージーランドに2種(ウロペタラ属Uropetala)、チリに1種(ペネス属Phenes)、北アメリカの東側に1種(タコプテリックス属Tachopteryx)、西側には日本産と同属の1種(タニプテリックス属Tanypteryx)が分布している。

朝比奈正二郎


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ムカシヤンマ」の意味・わかりやすい解説

ムカシヤンマ
Tanypteryx pryeri

トンボ目ムカシヤンマ科。腹長 50mm,後翅長 47mm内外。体は黒色で黄色の斑紋があり,サナエトンボヤンマに似るが,腹部は太く円筒状になっている。複眼は広く離れ,後頭部は台形。下唇中片は中央で裂ける。前翅の三角室は縦長であるが,後翅のそれはわずかに横に長い。縁紋は細く長い。成虫は5~6月 (山地では7月) に出現して渓流付近を飛翔する。幼虫は湿った土の中にトンネルをつくってすみ,空気呼吸をする。日本固有種で,本州各地と九州に産する。なおムカシヤンマ科 Petaluridaeは世界に 10種が知られ,いずれも泥中に産卵し,幼虫は土の中にトンネルをつくって生活している。 (→トンボ類 )  

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