やんま

精選版 日本国語大辞典 「やんま」の意味・読み・例文・類語

やんま

  1. 〘 名詞 〙 女郎娼妓。やん。多く、人形浄瑠璃社会で用いられた語。
    1. [初出の実例]「客をさしてきんちゃく、女郎を見てはやんま、皆それぞれにわるい事はおほえよく」(出典:浮世草子・当世芝居気質(1777)一)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「やんま」の意味・わかりやすい解説

ヤンマ
やんま / 蜻蜓

昆虫トンボ目ヤンマ科Aeschnidaeの昆虫の総称広義にはオニヤンマ科、ムカシヤンマ科を含め、ときに大形のサナエトンボ科の種類もそのようによぶことがある。狭義のヤンマ科の種類は、一般に体長60ミリメートル以上の大形昆虫で、複眼は背面で広く相接着し、その後方に小さい三角形の後頭背面部を残す。下唇の中片には裂け目はないが、中央に1対の小突起がある。腹節側縁には一般に側稜(りょう)があり、雌の第8、第9腹節には産卵管が発達する。前翅(ぜんし)と後翅の三角室はほぼ同形で翅端方向に長く、また雄の後翅肛角(こうかく)は突出する。

 ヤンマ科の代表はギンヤンマAnax parthenope juliusであるが、平地の池沼種であるため環境破壊によって著しく減少した。この種には海洋飛来性があり、熱帯産のオオギンヤンマとともに北上飛来し、とくにギンヤンマは北海道東部まで達する。ルリボシヤンマAeschna junceaは北方種であるが、関西地方、四国、九州では山地の池沼に限られる。カトリヤンマGynacantha japonica成虫未熟の時代には薄暮と薄明に地表を群飛して摂食する。サラサヤンマOligoaeschna pryeriは小形種で低山地の湿地に育ち、5~6月ごろ短期間現れるが、本科のうち原始的なものと考えられる。アオヤンマ、ネアカヨシヤンマ、ヤブヤンママルタンヤンマなどは平地種で、ごく小さい水域にも育つが、生息地の都市化によって全国的に著しく減少した。コシボソヤンマBoyeria maclachlaniミルンヤンマは幼虫時代流水性で、前者山麓(さんろく)地帯に、後者山間渓流に育つ。日本産のヤンマ科昆虫は琉球(りゅうきゅう)諸島のものを加えれば21種あり、いずれもよい環境の指標昆虫となるものである。

朝比奈正二郎


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「やんま」の意味・わかりやすい解説

ヤンマ (蜻蜓)

狭義にはトンボ目ヤンマ科の昆虫の総称,広義にはさらにオニヤンマ科,ムカシヤンマ科,大型のサナエトンボ科の種を含む大型のトンボ類の俗称として用いられる。ヤンマ科Aeschnidaeのトンボは一般に体長60mm以上と大型で,左右の複眼は背面で広くくっついている。下唇の中片には裂け目はないが,中央に1対の小突起がある。雌の第8,9腹節腹面には産卵管が発達している。前・後翅の三角室はほぼ同形で翅端の方向に長い。

 ヤンマ科の日本産は21種あり,ギンヤンマがふつうに知られている。本種は海洋飛来性があり,熱帯産のオオギンヤンマとともに北上飛来し,ギンヤンマは北海道東部にまで達する。北日本に多いルリボシヤンマAeschna junceaは北半球に広く分布し,日本はその分布の南限で四国,九州まで達し,山地の池沼に見られる。サラサヤンマOligoaeschna pryeriは小型種で低山地の湿地に生息する原始的なヤンマである。アオヤンマ,ネアカヨシヤンマ,ヤブヤンマ,マルタンヤンマなどは平地にすみ,小さい水域にも育つが,現在は都市化による自然破壊で著しく減少した。山間の渓流にはミルンヤンマが育つ。これらのヤンマ類は環境の指標昆虫として役だつ。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「やんま」の意味・わかりやすい解説

ヤンマ

トンボ目ヤンマ科およびオニヤンマ科の昆虫の総称。大型種ばかりで,体長50mm以下の種類はいない。複眼は著しく大きく左右相接する。どれも静止するときは小枝などに下垂する。水辺や林間を往復するもの,薄暮に活動するものなどがある。若虫は成虫になるのに数年を要する。日本にはヤンマ科はギンヤンマカトリヤンマなど22種,オニヤンマ科はオニヤンマなど5種がいる。オニヤンマ科のうちミナミヤンマ類は独立の科として扱う立場がある。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「やんま」の意味・わかりやすい解説

ヤンマ
Aeschnidae; darner

トンボ目ヤンマ科に属する昆虫の総称。一般に大型のトンボで,美しい色彩の種が多く,強大な飛翔力をもつ。複眼は一線をもって左右が相接し,下唇中片の中央に1対の小突起がある。翅は,前後とも三角室は横長で翅端方向に長く,中に小横脈がある。雄の後翅肛角が突き出る。雌は発達した産卵管をもち,普通植物組織内に産卵する。オニヤンマ科,ムカシヤンマ科,サナエトンボ科などと近縁で,日本にはギンヤンマなど約 20種が知られる。 (→トンボ類 )  

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のやんまの言及

【ケナフ】より

…茎からジュートに似た繊維を採るアオイ科の一年草。中国ではヤンマ(洋麻)という。原産地はアフリカまたはインドとされ,熱帯から温帯にかけて世界各地で栽培されている。…

※「やんま」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android