改訂新版 世界大百科事典 「サナエトンボ」の意味・わかりやすい解説
サナエトンボ
トンボ目サナエトンボ科Gomphidaeの昆虫の総称。春期に羽化する種類が多いのでこの和名があるが,日本では早苗とりの時期よりも早く出るものや盛夏に現れる種類が少なくない。いずれも黒色と黄色の体斑をもつ体のがんじょうなトンボである。停水に育つ種類(コサナエ,ウチワヤンマ)もあるが,大部分は流水の砂れき底や泥土の中に育ち,羽化後の成虫は2~3週間を樹上で過ごし,体が成熟してから水辺に飛来する。雌の産卵器は弁状に単純化し,卵は水中や湿土中に散布される。幼虫期間は2~5年くらい。パプア・ニューギニア(1種だけ)以外の世界に広く分布し,日本産は26種4亜種ある。大型種にはウチワヤンマ,コオニヤンマがあり,中型種にはミヤマサナエ,ヤマサナエ,アオサナエ,オナガサナエ,ホンサナエなど,また小型種にはコサナエ,ダビトサナエ,オジロサナエなどがある。メガネサナエ,ナゴヤサナエは夏期に川幅の広い河川の水深の大きいところに育つ。
執筆者:朝比奈 正二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報