日本大百科全書(ニッポニカ) 「サナエトンボ」の意味・わかりやすい解説
サナエトンボ
さなえとんぼ / 早苗蜻蛉
昆虫綱トンボ目サナエトンボ科Gomphidaeに属する昆虫の総称。いずれも体に黒色と黄色の斑紋(はんもん)をもつ種類である。幼虫は停水に育つものも若干あるが(コサナエ、ウチワヤンマなど)、大部分は流水の水底の砂礫(されき)や泥土の中で育つ。春季に羽化するものが多く、成虫は羽化後2、3週間は樹上にいて摂食活動をし、体が成熟してから水域に飛来する。雌の産卵器は弁状に単純化し、卵は水中や湿土中に散布される。幼虫期間は3~5年を要する。この科は世界に広く分布するが、ニューギニア島地域にはわずか1種あるにすぎない。日本産の大形種にはウチワヤンマ、コオニヤンマがあり、中形種にはヤマサナエ、ミヤマサナエ、オナガサナエ、アオサナエ、メガネサナエ、ホンサナエなどがあり、小形種にはコサナエ、ダビトサナエ、ヒメクロサナエ、オジロサナエなどがある。大部分は春季に羽化出現するが、夏季に現れるものにメガネサナエ、ナゴヤサナエ、オオサカサナエ、ウチワヤンマ、タイワンウチワヤンマ、ミヤマサナエがあり、このうち最後の2種を除いた4種は泥底の湖水や大河の生息者である。
[朝比奈正二郎]