改訂新版 世界大百科事典 「ムルジア派」の意味・わかりやすい解説
ムルジア派 (ムルジアは)
Murji'a
8世紀の前半,コーランの解釈を通じ,イスラム教徒の多数の者に支持されうる教義と儀礼の定立・箇条化を図っていた人々。ムルジアというアラビア語は〈延期するもの〉を意味し,イブン・サードによれば,彼らは〈ウスマーンとアリーについて判断を延期し,信仰(イーマーン)と不信仰(クフル)に関し意見を述べなかった〉という。つまり,ハワーリジュ派とシーア派のいずれにもくみせず,信仰と不信仰の問題は神の審判に待つとしたのである。ムルジア派の多くは,クーファの初期法学派の学者とも重なり合い,イスラム思想史上スンナ派ウラマーの先駆者として位置づけられる。彼らの方法も,初期法学派のそれと同じラーイ(個人的見解)の行使で,学派のラーイの平均値を伝承という形で表明し,それはしばしばムハンマドその人の言葉に仮託されたが,これらはもちろん厳密な意味でのハディースではない。
執筆者:嶋田 襄平
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