日本大百科全書(ニッポニカ) 「メシマコブ」の意味・わかりやすい解説
メシマコブ
めしまこぶ / 女島瘤
[学] Phellinus linteus (Berk. et Curt.) Aosh.
担子菌類、サルノコシカケ目タバコウロコタケ科の木質、多年生のキノコ。漢方で「猿の腰掛」として薬用にされるのは本菌である。傘は径5~15センチメートル、厚さ2~3センチメートルの半円形で、扁平(へんぺい)または丸山形。表面は暗褐色、周辺と裏面は黄色。上面には同心円状に並ぶ隆起帯と縦横に走る細かい亀裂(きれつ)がある。縦断すると肉は鮮黄色ないし黄褐色。管孔(くだあな)部は多層をなし、胞子は淡黄色で、径3~4マイクロメートルの類球形。子実層には褐色で厚膜の剛毛体がある。日本と北アメリカに分布する。
メシマコブの名は、長崎県男女(だんじょ)群島の女島(めしま)産の猿の腰掛を意味する地方名からとられたものである。メシマコブは同島に多い天然生のクワに多数発生することから、女島は古くからメシマコブの主産地とされた。その後、伊豆七島の八丈島の自生クワにもこのキノコが多く発生することがわかり、江戸時代からは両島産のメシマコブが良品とされた。漢方では利尿、健胃、下痢止めなどに利用される。また、最近では、本菌に有望な抗腫瘍(しゅよう)性の物質が含まれているという研究報告も出されている。
漢方で桑黄(そうおう)とよぶ薬物を、日本ではクワに生える黄色の猿の腰掛の意でとらえ、メシマコブをあてているが、中国の『中国薬用真菌』第2版(1978・劉波(りゅうは)著)では、キコブタケP. igniarius (Fr.) Qúel.としている(キコブタケには黄色みはない)。このように、日中で桑黄に対する解釈は違っているが、その薬効には差がないという。
[今関六也]