日本大百科全書(ニッポニカ) 「メーシーズ」の意味・わかりやすい解説
メーシーズ
めーしーず
Macy's Inc.
アメリカの歴史ある百貨店(デパートメント・ストア)。1858年にR. H. Macy & Co.の社名で創業以来、アメリカではメーシーズが通称とされていたが、2007年に社名をメーシーズMacy's Inc.と改称した。
1902年、ニューヨークはマンハッタンの三十四番街とブロードウェーの交差するヘラルド・スクエアに、9階建ての「デパートメント・ストア」が誕生した。これが今日のメーシーズの始まりであるが、その発祥は南北戦争以前にまでさかのぼる。1858年に創業者メーシーRowland Hussey Macy(1822―1919)によって高級衣料品店としてニューヨークに開業したR. H. Macy & Co.が、デパートメント・ストアとしての形態を整えたのは1870年代に入ってからのことである。しかも従来の組織とは異なり、商品戦略の責任者であるバイヤー主導型の部門別組織形態を採用し、「仕入と販売の分離強化」を目的とした、中央(本部)に権限を集中して管理・統制する「集権的職能分離組織」を構築した。これは俗に「垂直統合」とよばれる百貨店経営の革新の始まりであった。
有力デパートとして「メーシーズ」が成長路線を歩み始めるのは、1950年代から1960年代以降のことである。この時代は、ウェストサイド地区の荒廃によって、中産階級がマンハッタンからニューヨーク市内周辺やニュージャージー州郊外へ移動を開始した郊外化現象の真っただ中であった。すなわち市場環境変化に伴う業績悪化と社内モラルの低下によって、それまでアメリカのデパートの代名詞であった「メーシーズ」の栄光が一気に崩れ去りつつある、最悪の状況を迎えていた時期であった。この最悪の状況を克服した人物がハーバード大学経営大学院出身のエドワード・フィンケルシュタインである。彼はそれまでバーゲン会場であった地階を家庭雑貨、台所用品と食品の売場に改め、ビジュアル(視覚的)・プレゼンテーションによってよみがえらせた。このザ・セラーThe Cellar(地下食料庫の意)という世界初の試みは、地階売場に改革をもたらした奇跡の成功劇であった。さらに、すでに確立していたスペシャルティ・ストア(専門店)に、個人の生活価値への適合手法を取り入れた独特のライフストア・コンセプトを導入し、カジュアル・ショップの「エアロポステール」「チャータークラブ」「ファンタジア」など、数多くの専門店を開発し成功を収めた。
しかし、ほかのデパートと同様、組織の肥大化は硬直化・官僚化を生み、急変する市場ニーズへの対応に乗り遅れることとなる。1986年、業績悪化に伴い同社取締役を含むメーシー・アクエアーリング・グループに買収されたのち、1992年には会社更生法の適用を受けることとなり、1994年12月全米最大のデパートメント・ストアであるフェデレーテッド・デパートメント・ストアーズFederated Department Stores, Inc.(FDS)の傘下となった。
[角田正博]
その後の動き
FDSは2006年8月、競合していたメイ・デパートメント・ストアーズMay Department Stores(創業1877年)を買収し、翌2007年6月に社名をメーシーズMacy's Inc.に変更。2009年時点で、メーシーズのデパート店舗数は800を超え、ほかにブルーミングデールズBloomingdalesの名称でも店舗を展開している。従業員数は16万7000人以上。2008年度の売上高は248億9200万ドルである。
[編集部]