アメリカ映画。製作ウォルト・ディズニー。1940年作品。1920年代からアニメーション映画界を牽引(けんいん)してきたウォルト・ディズニー社が、初めて立体音響(ステレオサウンド)を導入して製作した長編アニメーション映画。音楽が物語を紡ぎ、また映画作品の主役となる可能性を切り開いた功績は大きい。当時立体音響装置を備えている上映館が少なかったこともあり、あまり興行的には成功しなかった。八つのクラシック音楽のオーケストラ演奏が八つの時代を描き、音とアニメーション映像とを同調させている。使用された曲は、バッハの「トッカータとフーガ ニ短調」、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」、デュカスの「魔法使いの弟子」、ストラビンスキーの「春の祭典」、ベートーベンの交響曲「田園」、ポンキエッリの「時の踊り」、ムソルグスキーの「はげ山の一夜」、シューベルトの「アベ・マリア」。1955年(昭和30)日本公開。
[堤龍一郎]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…それに対してバロック音楽は,異質的・対極的なものの緊張をはらんだ結びつけによって動的・劇的表現に向かった。これは,絵画における明暗の対比やダイナミックな表現と軌を一にするもので,声楽曲の分野ではオペラやオラトリオなどの劇音楽の形式を生み,器楽曲の分野ではコンチェルト(協奏曲)やトッカータ,ファンタジア(幻想曲)のような形式の成立を促した。具体的な表現手段に目を注ぐなら,本来異質的な響きのメディアである声と楽器の結合,二重合唱における明と暗の音色的対比,独奏(唱)と合奏(唱)の機能上の対比,強と弱(ディナーミク)の音響レベルの対置,抒情的アリアと言葉に重点をおいたレチタティーボの対比,拍節感の強い部分と無拍節の部分の併置などが挙げられるが,これらの諸要素はしばしば手を携えて芸術的な効果をあげてゆくのである。…
…質的には優れていた《バッタ君》の興行的失敗が直接の原因である。一方,ディズニーのほうは,さらに《シリー・シンフォニー》の集大成である空前の長編《ファンタジア》(1940)で世界最初のステレオ・サウンドを使用,音楽と動画の融合という壮大な野心作を完成する。 第2次世界大戦が始まろうとする1930年代末から40年代にかけて,ウォルター・ランツ製作の《ウッディ・ウッドペッカー》(1940‐72),ウィリアム・ハンナとジョゼフ・バーベラ演出の《トムとジェリー》(1940‐58),ロバート・マッキンソン,チャック・ジョーンズ,フリッツ・フリーレングらの演出による〈ワーナー漫画〉の《バッグス・バニー》(1938‐64),《ロードランナー》(1949‐68)等々,ほのぼのとしたディズニー漫画とは打って変わって猛烈な暴力性,破壊性をもち込んだ短編アニメが隆盛を極め,〈ハリウッド・カートゥーン・コメディ〉(ドタバタ漫画)の黄金時代を迎えた。…
… ヨーロッパ映画の作曲家としては,フェリーニ監督作品(《道》《甘い生活》等々)を中心としたイタリアのN.ロータ(1911‐79),J.ドゥミー監督作品(とくにせりふがすべて歌われた《シェルブールの雨傘》など)を中心にしたフランスのM.ルグラン(1932‐ ),マカロニウェスタン(S.レオーネ監督《荒野の用心棒》《夕陽のガンマン》等々)を中心にしたイタリアのE.モリコーネ,ミカエル・カコヤニス監督作品(《エレクトラ》《その男ゾルバ》)を中心にしたギリシアのミキス・テオドラキスらが輩出するが,やがてハリウッドに吸収されハリウッドの映画音楽を活性化することになる。
[映画音楽のレコード化]
ディズニーの長編アニメーション《ファンタジア》(1940)は,〈レコードのステレオ化に先立つこと18年,ステレオ録音再生を実現した最初の作品として記録すべきである〉(野口久光)とされるが,同時に〈レコードのステレオ化〉によって映画音楽のレコード化も飛躍的に促進された現象も注目されよう。映画音楽の最初のレコード化は,アーサー・ブリス作曲のイギリス映画《来るべき世界》(1936)(アメリカでは1943年のV.ヤング作曲の《誰が為に鐘は鳴る》)であるといわれる。…
…ミッキーは広範な人気を獲得,やがて新聞や雑誌にも進出した。ディズニーはその後,ドナルド・ダックや犬のプルートなども登場する作品を続々作り,37年には最初のカラー長編アニメーション映画《白雪姫》を完成,40年にはストコフスキーの協力を得て世界の名曲をアニメーションにした《ファンタジア》を世に出した。また記録映画にも進出したほか,通常の劇映画でも児童ものを中心に豊富な仕事をした。…
※「ファンタジア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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