改訂新版 世界大百科事典 「モクヨクカイメン」の意味・わかりやすい解説
モクヨクカイメン (沐浴海綿)
bathsponge
Spongia officinalis
尋常海綿綱モクヨクカイメン科の海綿動物。別名ヨクヨウカイメン(浴用海綿),ユアミカイメン(湯浴海綿)。亜熱帯から熱帯域に分布し,日本では沖縄に産する。世界の主要産地は地中海,カリブ海,フロリダ,キューバなどで,水温が25℃以下にならず,潮流が速くて清澄な場所に成育する。ふつう直径が30cmほどの黒い塊や殻層状になり,表面のところどころから管が突出して,その先端に口が開いている。内部は黄褐色から灰褐色で,太い溝が不規則に走っている。骨格は海綿質繊維で網目状になっており,繊維の間は寒天様物質で埋められている。
モクヨクカイメンを加工精製したものは乾燥しても破れず,水を含むとふくれて弾力性を生じ,酸やアルカリに強いことなどから文房具,医療用,機械器具の洗浄用などに利用されてきた。アメリカのフロリダ沖では養殖をしており,3年間で径15cmほどまでに成長する。日本でもかつて沖縄で垂下式の養殖が行われたことがあった。比較的高価な品物である。
執筆者:今島 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報