モササウルス(読み)もささうるす(英語表記)mosasaur

日本大百科全書(ニッポニカ) 「モササウルス」の意味・わかりやすい解説

モササウルス
もささうるす
mosasaur
[学] Mosasaurus missouriensis

中生代白亜紀後期の、約9960万年~6550万年前に浅海に栄えた肉食の大形海生爬虫類(はちゅうるい)。海トカゲ竜もしくは蒼竜(そうりゅう)ともよばれ、分類上はトカゲ目の一つ。この仲間にはいくつかの属が知られており、モササウルスのほかにティロサウルスTylosaurus、プロトサウルスProtosaurus、クリダステスClidastesなどが著名である。大きさも全長3~15メートルと多様であった。ベルギーやアメリカのカンザス州からの産出が多い。日本でも北海道の函渕(はこぶち)層群や、本州、四国、淡路(あわじ)島の和泉(いずみ)層群で多く報告されている。いずれも性格が凶暴であったようで、下あごやひれに傷跡があったり切断されたりしていることが多い。体や尾の外観はワニ類に似るが、対(つい)の肢(あし)は水かき状のひれを形成し、細長く伸びたあごには鋭い歯を備える。歯は大きく円錐(えんすい)形で丸みを帯びた基部が歯槽(しそう)中に植立する。この歯でかみつかれたアンモナイトの殻といわれた標本が化石として発見されたが、疑問も呈されている。巻き貝による穿孔(せんこう)跡の可能性がある。また19世紀後半にオランダフランスの間でモササウルスの頭骨を争って法廷沙汰(ざた)となったり、戦争による戦利品とされた話は有名である。

[小畠郁生]

『小畠郁生著『白亜紀の自然史』(1993・東京大学出版会)』

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