改訂新版 世界大百科事典 「モデル賃金」の意味・わかりやすい解説
モデル賃金 (モデルちんぎん)
学校卒業直後に企業に入り,平均的・標準的に昇進しつづけた場合の給与(基本給と手当,ただし所定労働時間外の労働について支払われる給与を除く)を示すものである。このモデルは学歴・年齢・勤続年数・扶養家族数を指定し(たとえば高等学校卒・男子・27歳・勤続9年・扶養家族1人の者というように),一般的な月収額を企業について調査したものである。モデル賃金に2種ある。(1)は理論モデルと呼ばれ,指定された条件に合う従業員給与を就業規則・内規などで平均的に昇進したと仮定して想定賃金をつくるもの,(2)は実在者モデルと呼ばれ,モデルに合致するものがいれば現実の額を,これに合致するものがいないときは近い条件の者の現実の給与から類推した額を示すもの,である。モデル賃金は,中途採用者や学校卒業が遅れた者を含まず,標準的昇進者を本社レベルで推定するため,現実の給与額より高額に出る傾向がつよい。
モデル賃金は,企業の昇給基準線をつくったり,給与水準や昇給度の企業間比較を行ったりするのに用いられる。おもなモデル賃金調査には,中央労働委員会事務局〈賃金事情調査〉(1952年以降毎年実施。調査企業は中労委の調整の対象になる可能性を有する大企業のなかから選定),東京都労働局〈中小企業の賃金事情調査〉などがある。
執筆者:孫田 良平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報