賃金計算の基本となる賃金。日本の賃金体系の中核をなすもので,能率給,時間外手当のほか一時金,退職金などの算定基礎ともなる。基本給は日本では,本給,本俸,本人給などとも呼ばれ,また年齢給,勤続給,学歴給,経験給,職務給,職能給,総合給(いくつかの要素の総合評価給)などに分けられる。このうち,純粋年功賃金ともいうべき年齢給や勤続給は,今ではあまり採用されていない。これに対し,現在最も広く採用されているのは総合給である。1981年の労働省調査では,総合給のみで基本給を構成する企業は全体の63.5%,他との併用を含めると75.5%にのぼる。そして,この総合給が初任給プラス毎年の昇給というしくみによって運用されるため,日本では勤続年数に応じて上昇する年功賃金が支配的となっている。もっとも,80年代にはいって,定年延長とひきかえの中高年層への昇給停止や職務給・職能給の導入など,年功賃金の修正が急速に展開されようとしている。なお,所定内賃金中の基本給の比率は1958年以来80~85%を推移しているが,近年はやや低下している。一方,所定外賃金をも含めた月間賃金中の基本給比率では,日本は超過勤務手当の比重が大きいので,81年でも73.5%と低い。企業規模別にみると,所定内賃金中の基本給比率では1980年前後でみると大企業のほうが1%内外高いが,月間賃金中のそれでは一貫して小企業ほど高い傾向がみられる。
→賃金
執筆者:上井 喜彦
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一般に賃金は基本的部分とそれ以外の付加的部分とから成り立っているが、このうち前者にあたるもの。本給、本人給などともよばれる。年齢、勤続年数、学歴などの属人的要素を基準にするもの(属人給)、職務、能力、勤務成績などの仕事的要素を基準にするもの(仕事給)、それらを総合勘案するもの(総合給)の三つに分けられるが、日本では第三の方式が広く普及している。この基本給は、諸手当、賞与、退職金などの算定基準としても用いられるため、賃金に占める意義は大きい。日本の場合、諸手当が多く、基本給が全賃金に占める比重が低いうえ、総合決定給ゆえに、決定要素や決定方法がきわめて不明確となっているなどの問題がある。
[横山寿一]
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…前者は労働協約や労働基準法にもとづく所定労働時間に対応して支払われる賃金部分のことで,後者は所定時間以上労働したときに支払われる部分である。つぎに,〈所定内賃金〉は〈基本給〉と〈業績給(能率給)〉と〈諸手当〉(家族手当,住宅手当等)の三つのグループに大別される。ふつう業績給を採用していない産業や企業では,基本給+諸手当というかたちをとり,鉄鋼や造船業のように業績給を採用している企業では,基本給+業績給+諸手当という組立てをとっている。…
…これは年功的昇進制度といわれる。 また,日本の企業の報酬制度の基礎である基本給は,原則として初任給と定期昇給によって決められている。初任給は採用時の基本給であり,定期昇給制度は毎年一定の時期(多くは4月1日)に全従業員の基本給を上方に改訂する制度で,この場合,個々の従業員について職務,過去1年間の勤怠,業績,能力の伸長度などを評価し,昇給額または昇給率に差を設けている。…
※「基本給」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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