モルモン教(読み)モルモンキョウ(その他表記)Mormons

デジタル大辞泉 「モルモン教」の意味・読み・例文・類語

モルモン‐きょう〔‐ケウ〕【モルモン教】

Mormonism末日聖徒イエス‐キリスト教会の俗称。1830年に米国のジョセフ=スミスが神の啓示を受けたとして創立した傍系的キリスト教一派聖書のほかに「モルモンの書」をも正典とする。初期には一夫多妻主義が主張されたが、1890年に廃止。本部はユタ州ソルトレークシティー。第二次大戦後、日本でも伝道。

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共同通信ニュース用語解説 「モルモン教」の解説

モルモン教

正式名称「末日聖徒イエス・キリスト教会」の頭文字から「LDS」とも呼ばれる。神とイエス・キリストが目の前に現れたとする男性が1830年に創設。信者の割合は全米で約2%だが、教団本部があるユタ州では60%以上を占めるなど西部で多い。信者は政治的に保守的な傾向が顕著。信仰の中核施設である「神殿」は東京都港区と福岡市にもある。(共同)

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精選版 日本国語大辞典 「モルモン教」の意味・読み・例文・類語

モルモン‐きょう‥ケウ【モルモン教】

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] Mormonism の訳語 ) アメリカにおけるキリスト教の一宗派、「末日聖徒イエス‐キリストの教会」の通称。ジョゼフ=スミスが、一八三〇年に組織。スミスは暴徒に殺害されたが、後継者ブリガム=ヤングが一八四七年ユタ州ソルトレークシティに本拠を移し発展。「旧・新約聖書」「モルモン書(経)」等を経典とし、神からの絶えざる啓示を中心の主張とする。一夫多妻制を提唱していたが、一八九〇年以降はこれを廃止した。モルモン宗。〔哲学字彙(1881)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「モルモン教」の意味・わかりやすい解説

モルモン教
もるもんきょう
Mormons
Mormonism

1830年にアメリカ合衆国に設立されたプロテスタントの一派。モルモン教として知られる宗教運動にはいくつかの教派があり、そのすべての起源は創唱者ジョセフ・スミスにさかのぼることができる。スミスは天使モロニイから黄金の板について啓示を受けたとし、これに書かれていた文字を翻訳、1830年『モルモン経(けい)』The Book of Mormonを出版した。同年ニューヨーク州の法律のもとで正式に教会The Church of Christが設立され、1838年には名称を「末日聖徒イエス・キリスト教会」The Church of Jesus Christ of Latter-day Saintsに変更した。この教派はのちにユタ州ソルト・レーク・シティに本部をもつ最大のグループとなるが、モルモン教の流れに属する2番目に大きい教派は、ミズーリ州インディペンデンスに本部をもつ「末日聖徒再編教会」The Reorganized Church of Jesus Christ of Latter-Day Saintsである。

 初期には一夫多妻(1890年に公式の宣言によって廃止)などの主張が迫害を受け、ニューヨーク州からオハイオ州カートランド、ミズーリ州インディペンデンス、イリノイ州と各地を転々とした。イリノイ州ナウボーで、スミスのもつ強大な権力が人々の反感を買い、彼は牢獄(ろうごく)に監禁された後、暴徒に殺害された。後継者ブリガム・ヤング(1801―77)がリーダーとなり、安住の地を求めてロッキー山脈を越えて最終目的地ソルト・レークの大渓谷に移住、市を建設して、大家族を中心に農業、産業をおこし、一円をユタ州にまで発展させた。

 スミスは人間の運命の決定にあたって人間の自由の役割を強調したが、これはメソジストバプティストに共通する点であり、そのほか千年王国(至福千年)説、信仰復興運動、禁酒運動などの時代の風潮に対応して多様な教義を包括している。

 モルモン教の教義のなかで重要なものとして、「初代教会へ戻れ」という復古主義と再臨待望があげられる。1990年ごろから、バプティスト派、カトリック教会、ディサイプル、ルター派教会(ルーテル派教会)、メソジスト派とともにアメリカにおけるキリスト教の六つの主要グループの一つといわれている。1995年時点で、アメリカのモルモン教の信徒数は、末日聖徒再編教会などを含めると500万人を越え、人口の約2%を占めている。聖書を聖典の一つにしているが、キリスト教ではなく、「新しい宗教」とする説もある。

[野村文子]

『生駒孝彰著『アメリカ生れのキリスト教』(1981・旺史社)』『高山真知子著「アメリカ史の謎――モルモン教における叙事詩の発生と一夫多妻制度の意味」(井門富二夫編『多元社会の宗教集団』所収・1992・大明堂)』『Klaus J. HansenMormonism and the American Experience(1981, University of Chicago Press)』『Jan ShippsMormonism――The Story of a New Religious Tradition(1985, Illinois University Press)』

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改訂新版 世界大百科事典 「モルモン教」の意味・わかりやすい解説

モルモン教 (モルモンきょう)
Mormons

〈末日聖徒イエス・キリスト教会Church of Jesus Christ of Latter-Day Saints〉の俗称。1830年スミスJoseph Smith(1805-44)によって創立された。スミスが発見したとされるアメリカ大陸の古代住民に神から与えられた《モルモン経》を旧新約聖書とならぶ経典として重要視し,シオン(神の国)がアメリカ大陸に樹立されることを信じる。ニューヨーク州で始まったが迫害を受けてオハイオ,ミズーリ,イリノイなどを経て,47年ついに安住地ユタに入り,ソルト・レーク・シティを中心に,殺されたスミスの後継者B.ヤングの指導のもとに独特な共同体を建設した。とくにその多妻結婚制度で有名であるが,90年に連邦政府の勧めによりこの制度は廃止された。正統的キリスト教からは異端とみなされているが,社会的にはキリスト教の一派として認められており,20世紀初頭には数十万であった会員数は,現在では400万(1980)を超す大宗派となり,日本を含む世界各国に宣教師を送っている。
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百科事典マイペディア 「モルモン教」の意味・わかりやすい解説

モルモン教【モルモンきょう】

〈末日聖徒イエス・キリスト教会Church of Jesus Christ of Latter-Day Saints〉の通称。米国のスミスJoseph Smith〔1805-1844〕が創始したプロテスタントの一派。聖書のほか《モルモン経》を聖典とし,シオン(神の国)がアメリカに建てられると信じる。初期には一夫多妻制で知られ,本拠地は迫害のため転々としたが,1847年以来ユタ州のソルト・レーク・シティに本部を置き,信徒数400万人を超える。
→関連項目オグデンビンガムプエブロユタ[州]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モルモン教」の意味・わかりやすい解説

モルモン教
モルモンきょう
Mormonism

1830年アメリカの J.スミスが創始した新宗派。正式には「末日聖徒イエス・キリスト教会」 Church of Jesus Christ of Latter-Day Saintsという。神によってアメリカ大陸の古代住民に与えられたといわれる預言の書『モルモン書』 The Book of Mormonを聖書に次ぐ聖典とする。その教義は,自己の教会だけの正統性の主張,永遠に分離した位格から成る三位三体の信仰,世界の末日まで繰返し行われる啓示への信仰などを特色とする。創設当初は一夫多妻を教義としていた (1890廃止) ほか,禁酒運動など,時代の風潮に対処する特色ある教えを展開。教会設立当初は社会通念にふれる行動が多く,各地で迫害を受け,スミスも 44年暴徒に殺された。スミスの後継者 B.ヤング (1801~77) は信徒だけの新しい天地を開くため,ロッキー山脈を越えてグレートソルト湖渓谷の未開墾の地に町をつくり (現在のソルトレークシティー,信徒は「新シオン」と呼ぶ) ,ここを中心に活発な布教活動を開始した。世界各地に教会を建て,会員数約 1000万。

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旺文社世界史事典 三訂版 「モルモン教」の解説

モルモン教
モルモンきょう
Mormon

1830年,アメリカのジョゼフ=スミスが創始したキリスト教の一派
正式な名称は末日聖教徒イエス=キリスト教会(Church of Jesus Christ of Latterday Saints)。ユダヤ教の影響を受けた特異な教義をもつプロテスタントの分派ゆえに迫害をうけ,スミスの死後,後継者ブリガム=ヤングに率いられて,現在のユタ州に定着。同州の人口の80%を信徒としている。

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世界大百科事典(旧版)内のモルモン教の言及

【スミス】より

モルモン教(正称は末日聖徒イエス・キリスト教会)の開祖。1820年以後啓示を受け,これを《モルモン経Book of Mormon》として出版,同時に教会を組織した(1830)。…

【ソルト・レーク・シティ】より

…人口17万2000(1994),大都市域人口113万(1992)で,同州人口の約55%に当たる。1847年東部から来たモルモン教徒がグレート・ソルト湖の南東約25kmの地点に定住し,町の礎を築いた。周辺を山岳,荒野,塩湖などに囲まれ,駅馬車や大陸横断鉄道の重要な中継地となった。…

※「モルモン教」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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