アメリカ合衆国、ユタ州中北部、ワサッチ山脈麓(ふもと)に位置する同州最大の都市で州都。人口18万1743(2000)。行政、経済、商工業の心臓部としてだけでなく、アメリカ国内だけで500万の信者をもつモルモン教(末日聖徒イエス・キリスト教会)の総本山として有名である。空路、陸路、とくに鉄道網が発達し、灌漑(かんがい)農業地帯が広がる。銅、鉄、銀、鉛など豊かな鉱物資源にも恵まれて、これらの製錬所が集中するとともに、農・畜産物の集散地、市場でもある。早くから工業が発達したが、従来の食品加工、製粉、出版・印刷、製油業などに加えて、薬品など生化学製品、電子機器、コンピュータ・ソフトウェア関連の進出が著しい。1847年、ブリガム・ヤングの率いるモルモン教徒によってモルモン教の中心地として町が設立され、灌漑農地が開かれた。1849年以降、ゴールド・ラッシュの続くカリフォルニアへのルートとなり、物資供給地として繁栄した。1869年の大陸横断鉄道の開通は、交易、集散地としての地位を築く大きな要素となった。1896年にユタ州の州都となる。1900年前後、ビンガム・キャニオンを中心とした鉱業が急速な都市発展を促し、1900年から1930年の間に人口が一挙に3倍にも膨れ上がった。
1850年創設のユタ大学を中心とする教育・文化の中心都市でもある。市内には美術館、博物館などの施設も多いが、モルモン教に関する建造物や記念碑が多くみられ、1853年から1893年にかけて建築された巨大な神殿など教会の重要な建物が集まるテンプル・スクエアは、市のシンボル的な存在である。モルモン教の世界的な布教活動が同市の芸術・文化の発展・交流に大きく寄与し、芸術性の高い音楽、バレエ、オペラなどを気軽に楽しむことができる。とくに音楽が盛んで、ユタ交響楽団や世界的に知られた聖歌隊モルモン教会合唱団があり、世界最大規模のパイプ・オルガンが備えられたタバナクル大会堂での公演は圧巻である。豊かな自然に恵まれ国内有数の行楽・景勝地も多く、とくに周辺は広大なスキーリゾート地として国内、国外から多くの人々が訪れる。2002年冬季オリンピック開催地。
[作野和世]
アメリカ合衆国西部,ユタ州北部の州都。人口17万8097(2005),大都市域人口113万(1992)で,同州人口の約55%に当たる。1847年東部から来たモルモン教徒がグレート・ソルト湖の南東約25kmの地点に定住し,町の礎を築いた。周辺を山岳,荒野,塩湖などに囲まれ,駅馬車や大陸横断鉄道の重要な中継地となった。各種農産物の集散地で,金属精錬,石油精製などの工業も交通の要衝という地の利を生かして発達している。壮麗なモルモン教の総本山は,この町のシンボルになっている。第2次大戦中は全米日系市民協会(JACL)が排日の激しかった太平洋沿岸を避け,ここに本部を移したこともあり,今でも日系人の数が多く,邦字新聞が発行されている。
執筆者:猿谷 要
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…スミスが発見したとされるアメリカ大陸の古代住民に神から与えられた《モルモン経》を旧新約聖書とならぶ経典として重要視し,シオン(神の国)がアメリカ大陸に樹立されることを信じる。ニューヨーク州で始まったが迫害を受けてオハイオ,ミズーリ,イリノイなどを経て,47年ついに安住地ユタに入り,ソルト・レーク・シティを中心に,殺されたスミスの後継者B.ヤングの指導のもとに独特な共同体を建設した。とくにその多妻結婚制度で有名であるが,90年に連邦政府の勧めによりこの制度は廃止された。…
※「ソルトレークシティ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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