改訂新版 世界大百科事典 「やかん」の意味・わかりやすい解説
やかん
落語。物知りぶる旦那に,八五郎がいろいろ質問し,旦那が怪しげな解答をしたあげく,今度は〈やかん〉の由来を尋ねる。すると旦那は,むかしは水わかしといったが,夜襲を受けた際に兜(かぶと)代りにして戦場へ出ると,敵の矢が飛んで来てカーン,飛んで来てカーンで〈やかん〉になったとごまかす。〈蓋が邪魔ですね〉〈ポッチをくわえて面代りにする〉。〈つるは〉〈顎にかけて忍びの緒の代りだ〉。〈口が邪魔でしょう〉〈敵の名乗りを聞く耳の役をする〉。〈耳なら両方にありそうなもんですが〉〈いや,ないほうは枕にして寝るほうだ〉。落語界では,物知りぶるのを〈やかん〉というほど有名な噺。原話は,1772年(明和9)の噺本《鹿の子餅》所収の〈薬罐(やかん)〉。
執筆者:興津 要
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報