やかん
落語。物知りぶる旦那に,八五郎がいろいろ質問し,旦那が怪しげな解答をしたあげく,今度は〈やかん〉の由来を尋ねる。すると旦那は,むかしは水わかしといったが,夜襲を受けた際に兜(かぶと)代りにして戦場へ出ると,敵の矢が飛んで来てカーン,飛んで来てカーンで〈やかん〉になったとごまかす。〈蓋が邪魔ですね〉〈ポッチをくわえて面代りにする〉。〈つるは〉〈顎にかけて忍びの緒の代りだ〉。〈口が邪魔でしょう〉〈敵の名乗りを聞く耳の役をする〉。〈耳なら両方にありそうなもんですが〉〈いや,ないほうは枕にして寝るほうだ〉。落語界では,物知りぶるのを〈やかん〉というほど有名な噺。原話は,1772年(明和9)の噺本《鹿の子餅》所収の〈薬罐(やかん)〉。
執筆者:興津 要
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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やかん
湯沸かしの器具の一つ。やかんは「薬缶」と書くように、昔は薬を煎(せん)じるものであった。室町時代の中ごろにはすでにやかんはあったようである。のちに、薬を煎じるために別の鍋(なべ)が使われるようになり、江戸時代ごろからは、やかんは主として湯を沸かすものになった。江戸時代にはやかんは湯缶ともよばれた。
初めは七厘などのこんろにすっぽりとはめて湯を沸かしたので、底の丸い形が一般的であった。のちに熱源はガスや電気にかわり、熱効率の点から熱の逃げにくい底の平らなものが多くなった。材質には、アルミニウム、アルマイト、ステンレス、ほうろう引き、銅などがある。形はやかんに似ているが土製のものは土瓶、鉄製のものは鉄瓶とよばれている。やかんもデザイン、色などが豊富になり、ケトルの名でよばれているものも多くなっている。
[河野友美]
『麻布やかん組合編著『やかんの本』(2005・ロコモーションパブリッシング)』
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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やかん
古典落語の演目のひとつ。「無学者」「無学者論」とも。大阪では「やかん根問」と題する。代表的な前座噺のひとつ。三代目三遊亭金馬が得意とした。オチはトントンオチ。主な登場人物は、隠居、町人。落語で、知ったかぶりを「やかん」というのはこのはなしを由来とする。
出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報
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