改訂新版 世界大百科事典 「ケショウヤナギ」の意味・わかりやすい解説
ケショウヤナギ (化粧柳)
Chosenia arbutifolia(Pallas)A.Skvortz.
河岸の砂礫地(されきち)に生えるヤナギ科の落葉高木。東北アジアに広く分布し,日本では北海道のほか,信州上高地付近に隔離分布する。和名は若枝が粉白色を帯びる特徴にちなみ,属の学名は最初朝鮮で発見されたことから名づけられた。幹は高さ20~25mに及ぶ。樹皮は灰褐色で不規則に縦に裂ける。葉は細長い長楕円形で長さ5cm内外。托葉はない。花は4~5月に咲き,尾状花序は花時に下垂する。雄花は5本のおしべから,雌花は1個の子房からなる簡単なもので,雌雄異株である。雌花の花柱は2裂し,柱頭はさらに2裂する。ヤナギ属とちがって花に腺体がなく,風媒花であることなどから別属として区別される。1属1種。芽鱗が腹側で重なり合う点でオオバヤナギ属やヤナギ属マルバヤナギとの類縁が示唆される。材は器具材や下駄材として利用される。また若枝が白く美しいので,北日本では栽植されることがあるが,増殖や移植が少しむずかしい。
執筆者:矢原 徹一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報