日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤブソテツ」の意味・わかりやすい解説
ヤブソテツ
やぶそてつ / 藪蘇鉄
[学] Cyrtomium fortunei J. Sm.
オシダ科の常緑性シダ。根茎は短く斜上し、長さ40~80センチメートルの1回羽状複葉を束生する。葉柄につく鱗片(りんぺん)は鋭くとがり、基部のものほど幅が広い。羽片は10~25対ほどで、先端が上向きに曲がる幅の狭い鎌(かま)形である。葉脈は網状、胞子嚢(のう)群は数多く散らばってつき、円形で全縁の包膜をもつ。本州以南の林下や路傍に生ずる。変種のヤマヤブソテツは山地に多く、幅の広い羽片が10対前後つき、包膜には鋸歯(きょし)がある。
メヤブソテツC. caryotideumは、本州以南の山地の、とくに石灰岩地に多い。辺縁に鋸歯をもつ羽片は、ヤマヤブソテツよりさらに幅広く、数は10対以下と少ない。基部前側には三角形の耳状突起が目だつ。北海道南部以南の主として海岸近くに分布するオニヤブソテツC. falcatumは、大形で葉が暗緑色で光沢があり、見栄えがよいので欧米でも観賞用に栽植される。羽片は革質で堅い。ヤブソテツの仲間は三倍体が多く、無配生殖(卵細胞以外の細胞が単独に分裂し、胞子体を生ずる現象)を行うことが知られている。
[西田治文]