改訂新版 世界大百科事典 「ヤブソテツ」の意味・わかりやすい解説
ヤブソテツ
Cyrtomium fortunei J.Sm.
本州以南の暖地の林床や路傍に普通にみられるオシダ科の常緑多年生シダ植物。根茎は短く斜上し,地表生,5~8枚の葉を叢生(そうせい)する。葉柄には黒褐色で披針形から長楕円状披針形の鱗片があり,基部のものほど大型で密生する。葉は単羽状複葉,長さ50~70cm。羽片は通常15~25対,やや鎌形にまがり,先端は鋭尖頭から急尾状,基部はくさび形から広くさび形,上側に耳垂が出ることもある。胞子囊群は羽片の裏面のほぼ全体に多数散在し,包膜は円形で楯状につく。葉脈は網状に結合し,それぞれの網目内には1~2本の遊離脈が見られる。朝鮮半島南部に分布し,中国南部にもよく似たものがある。根茎を貫衆(かんじゆう)といい,駆虫薬に用いる。変種に山地の林床等に生えるヤマヤブソテツvar.clivicola(Makino)Tagawaと主に石灰岩地にみられるミヤコヤブソテツvar.intermedium Tagawaがある。近似種にオニヤブソテツC.falcatum(L.f.)Pr.(英名(house)holly fern)があり,海岸沿いに北海道南部まで分布する。両種とも観賞用に栽培され,欧米ではいくつかの園芸品種が作出されている。
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報